産経新聞社

ゆうゆうLife

(124)たかが給付金、されど給付金

 定額給付金が振り込まれた。

 振込先を記入せよ、との案内が来て、すぐに出したのに、わが自治体は首をかしげるほどの遅さだ。忘れたころにやっと来たのね、との感じで、なんか拍子抜けだった。 

 ちなみに、1人世帯の私は、1万2000円也。

 子供3人、義母と同居中の知人の家では、世帯分が10万円を超えたと言っていたから、なかなかの収入だった人も多い。

 それにしても、わざわざ入金しましたので確認してくださいの通知まで来たのには驚いた。全世帯に2度もお知らせをしたりして、郵便代はどのくらいかかったのかしら?と思う。

 かつ、全世帯への銀行振り込みで、銀行にどれくらい手数料が入ったのかしら?とも思う。

 いや、この作業にかかった人件費、事務費はいかばかりか?と想像したら、やっぱりなんかなあ、である。

 結果、どのあたりに経済効果があったのか知りたいものである。

 さて、この給付金をめぐっては、日本全国の家庭内で、あれこれの攻防戦が繰り広げられたらしい。

 夫が勝手に給付金の振込先を自分の預金通帳に指定したら、妻にお役所から委任状を出せとの連絡が来て、発覚。

 その逆のケースもあったりで、家庭内がもめもめになったとか。

 それから、子供たちの問題も大変だったもよう。

 近頃の子供は情報通でかつ自己中なので、18歳未満の子供分として給付される2万円は、自分に給付されたものであると、大主張。

 それをお小遣いとしてもらえた子、もらえなかった子、いろいろで、なにかと家庭内の火種になったとか。

 親の一喝で、無視せよ、と言ったって、相手が思春期の子供だったりしたら、なかなか。彼らは理屈が先にたっているから、結局、根負けして、子供に取られたから、家計の緊急援助にはならなかった、と嘆く親たちが実は多かったのだ。

 「親が1万2000円。なのに子供は2万円。意味がわかんない」と、不平を言う人がいるのは、そういう事情があるからとか。

 そもそも、誕生日が1日違いで、8000円も差が出るなんて、納得できますか?と訴える人もいて、政治家の思いつきは、大ざっぱ過ぎて繊細さに欠けていた様子。

 たかが給付金。されど給付金。

 ここにも現代家族の姿があれこれと映し出されていたのだった。(ノンフィクション作家 久田恵)

(2009/07/02)