買い物に行く時間がないから、インターネット通販に頼っている。
海外通販は発見があって面白い。先日、米国の通販サイトを見ていたら、どう見ても同じ水着が、別の商品として並んでいた。片方の商品説明に知らない単語がある。辞書を引いたら、「乳房切除者のための」という意味だった。
乳がんで乳房を失った人が、パッドを入れて使える水着だった。
日本の乳がん発生率は30人に1人、米国では8人に1人ともいわれる。患者が多い分、マーケットも広いのだろうが、商品がごく当たり前にある様子が、つらい経験をした人に「気にせず泳ごうよ」と、温かいエールを送っているようで、すてきだと思った。
こうした水着を扱う業者は日本にもある(国立がんセンターのサイト内に一覧表がある)が、目立たない。どこででも普通に目に入るようになるといい。
ずいぶん前だが、毎週日曜の夜、テレビで番組のつなぎに、短いイメージ映像が流れていた。モデルはいつも同じ女の子だが、毎回、新しく撮るらしく表情が変わる。ある日、笑った女の子の口元に前歯が1本なかった。
「生え変わりの時期なんだわ」と、ほほえましかったが、次から女の子は笑わなくなった。いや、笑うのだが、口を開けずに笑う。前歯が抜けていてもいいのにと思った。
先の米国通販は、子供用衣類のモデルに車いすの子や、歯列矯正のブリッジの子を使う。ブリッジは珍しくもないのだろうが、やはりエールなのだろう。人は病気になることも、車いすになることもある。そんなことに負い目を感じなくていい。
日本でも車いすのモデルが登場し、乳房を失った人のための水着が当たり前に売られるようになるのはいつのことだろうか。(ゆうゆうLife編集長 佐藤好美)
(2006/08/04)