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10年ぶりの胃カメラ

 あんまり具合が悪かったので、胃カメラを飲んだ。

 初めて飲んだのは、人間ドックで再検査になった10年前。太さはホースほどもあった気がする。「本当にこれを入れる気か」と驚き、口からカメラを入れる発想に、心の中で悪態をついた。

 このときの医師は「今までさんざん患者さんに『大丈夫、大丈夫』と言ってきたんですが、この前、初めて自分で飲んで、こんなにつらいものかと思いました」と率直で、思わず笑った。

 今回の発端は胃もたれ。食べられない日が1週間も続き、胃カメラ覚悟でクリニックに行った。それでも、診察では一抹の期待を抱いて、「先生、風邪でしょうか」と聞いてはみたのだ。

 しかし、消化器科を選んだせいなのか、医者はへんとう腺も見ない。腹部と背部を触診し、問診内容を真剣に検討している。「たぶん胃じゃない。腸でもないな。考えられるのは食道かな…。胃カメラを受けるのは案ですね」。風邪には目もくれないのだった。その職人かたぎに安心感を覚えた。「おかしいと言ったのに、見落とされた」という話はしばしば聞くのだから。

 10年ぶりの胃カメラはサインペンくらいの太さになっていた。技術進歩はすばらしい。今は鼻から入れるタイプもある。知人は「鼻からにしますか、口からにしますか」と聞かれ、思わず「口からにしてください」と答えてしまったという。ケーブルがのどの奥に触れない分、鼻の方が楽らしいが、何にしろ、初めてのことは怖い。

 結局、原因は分からずじまい。しかし、胃を見た医師はきっぱり言った。「この胃には、消化剤は必要ない。だから薬は出さない」。つい気休めに、薬でも飲みたい気分だったのを見透かされたのかもしれない。どこまでも職人かたぎな診療なのだった。

(ゆうゆうLife編集長 佐藤好美)

(2006/08/25)

 
 
 
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