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残していく家族

 大阪市に住む54歳の女性から先月、お手紙をいただいた。

 退院してきたら、夫が慣れぬ様子でお米をといでいる。夫や息子には家事をさせておくべきだったかと、悔やむ気持ちがしたためられていた(1日付掲載)。

 問い合わせて、女性が既に亡くなられたと知った。出すばかりになっていた手紙を、ご長男が投函(とうかん)したという。

 夫や息子をおいて先に逝くことが、最後の最後まで気がかりだったのだろうとしのばれて泣いた。

 この女性からは5月にも手紙を頂いた。子宮と肝臓のがん手術を受けながら、「前向きに笑って生きなくては、と思います。入院中、川柳の本に出合い、楽しく過ごしてきました」というカラリとした文面にひかれ、紙面掲載した。

 「1週間、入院したいと1年前 今年は今日で2カ月目」

 「同室の わがまま患者 行く道か」

 ペンネームは「元気なおばちゃん」。同僚が問い合わせ、新聞ではペンネームは使わない旨を伝えると、「あら、名前を出すと同室の人に分かっちゃうわよ」と明るい声が返ってきた。別の句も披露してくれ、「それも、掲載させてください」と頼むと、「だめよ、これは底意地が悪いわ」と、どこまでもユーモラスだったという。

 ご主人によると、ご二男の婚約者宅へあいさつに行くのを励みにされていたが、急に悪くなり、相手方が病院に訪問して対面がかなったという。「後から考えると、あれが、意識がはっきりしていた最後でした」。

 先月1日の入籍を見届けたかのように、5日に亡くなられた。手紙の通り、家族のことばかり案じていたのだろう。

 「(おいていく)家族が心配だなんて、本人の口から一言も聞いたことがなかった。弱音も吐かず、今も笑い顔しか思いだせません」と、ご主人は話していた。(ゆうゆうLife編集長 佐藤好美)

(2006/11/03)

 
 
 
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