長男を妊娠したころは、出産の危険性なんて考えたこともなかった。上司に妊娠を隠して、ブラジルへ3週間の出張に行って叱責を受け、その後も、夜討ち朝駆けをして、医者に安静を命じられたりした。知らないというのは怖い。
二男を産んだのは41歳。40代の出産は今や珍しくないが、医療取材にどっぷりつかった後で、高齢の出産に恐れをなし、「いざとなったら、夜中でも帝王切開できるところ」で産んだ。
出産にからむ母子の死亡は戦後、劇的に減った。しかし、母親が亡くなる確率はまだ、交通事故死に遭うのと同じだけある。子供が亡くなる確率はその30倍。産婦人科医の間では「お産は安全という“神話”があるが、お産はそんなに安全ではないと知ってもらった方がいい」との声が出るくらいなのだ。
出産で死亡した197人の妊婦について、産婦人科医ら42人が本当に救えなかったのか、再検討した研究がある。「救命がある程度、可能だった」とされた妊婦は72人に上った。
なぜ、救えなかったのか−。医師の基本的な知識や技術、緊急事態になる前の対処が問題とされたケースも多いが、圧倒的に多いのは、緊急時の対応の問題だ。
例えば、大量出血した場合、輸血しながら手術などで対処する。しかし、24時間態勢で対応できる産科施設は少ない。多くは人手や設備が不足しており、搬送しようにも、搬送先がいっぱいだったり、遠かったりで間に合わなくなるのだ。
医学的には救えても、態勢が整わないことが問題なのだが、態勢の整備は時間がかかる。
出産の危険にも個人差があるから、産む側も出産年齢や持病の有無、肥満などをチェック(http://www.aiiku.net/riskcheck.htm)して、自身のリスクを知っておきたい。(ゆうゆうLife編集長 佐藤好美)
(2007/01/12)