風邪がぐずぐずと続いていたら、知人が古くからある薬「ういろう」を教えてくれた。
出身が愛知県なので、「ウイロウ」と言われて思い浮かべたのは、名古屋名物の菓子「ういろう」だ。
ところが、彼女が言うのはこれではなく、神奈川県小田原市で販売されている薬。中国から伝えられ、600年以上も同じ原料で作られている。対面販売だけなので、彼女はちょっと出かけては購入するという。
そう言われれば、歌舞伎の十八番「外郎売(ういろううり)」は薬売りだ。歌舞伎に出てくる薬が今もあるなんて知らなかった。古くからある薬というだけで効きそうで、ワクワクしてしまう。
最近、調子が悪くて薬づいているが、ここ10年以上、「風邪をひいたかな」というときに飲むのは、やはり市販薬だ。市販の漢方薬にお気に入りがあって、「来た来た来たー」というあたりで飲む。苦いから、いかにも薬な感じがするのも、効く気がする理由かもしれない。
しかし、あんまりせきが続いたので、あきらめてかかりつけ医に行った。初老の医師は昔かたぎで、ちょっとお小言を聞きたくて行くようなところもある。
「風邪に効く薬はないからな。みんな、たかが風邪と思って仕事をするから、ちっとも治らん。入院でもするか?」。
風邪を治すのは薬でなく、休息というわけだ。
しかし、長引くせきに疲れ果て、「先生、仕事があるので、薬をください」と言ったら、「薬が効くと、仕事をするだろ。悪循環だ。あんまり効く薬も考えもんだ」。
それでも、処方箋(せん)を書いてくれたところで長年の付き合いに乗じて「先生、せき止めって便秘しませんか?」と、わがままなことを聞いた。医師は「するよ。イモを食え」と言ったのだった。(ゆうゆうLife編集長 佐藤好美)
(2007/01/26)