「ひとりになったら、娘の家の近くに引っ越すか、どこかのホームに入ろうかしら」。そんな声を時折、50〜60代の女性から聞く。
男性から聞かないのは、老後は妻に介護してもらって先に逝くものと信じているのだろう。
女性の平均寿命は今や、男性より7歳も長い。夫婦の一般的な年齢差も考えると、女性が将来、独りになるのは、暗黙の了解といえそうだ。
なのに、国は妻が夫に先立たれるのを、社会保障で手厚く面倒をみるべき「万が一」の事態と考えているようだ。
国民健康保険の取材をしたとき、ある大学教授(男性)に話を聞いた。負担の格差について、教授のボルテージはどんどん上がる。一番熱をこめて語ったのが、「国保や介護の世界で、遺族年金がほぼ『無収入』と見なされるのはおかしい」ということだった。
遺族年金は非課税だから、裕福な年金でも、保険料負担は格段に軽い。例えば大阪市では今年度、250万円の年金を受ける単身者(65)の国保料は年額約19万円(医療分のみ)。しかし、遺族年金なら、負担は約2万円で済む。
東京23区なら、同じ額の遺族年金でも、国保料は年9990円。月で割ったら、約832円だ。いくら何でも、安すぎるのではないか。
障害年金も非課税だ。ただ、不慮の事故で働けない人への障害年金や、人生半ばで子供を抱え、突然、夫に先立たれた人への遺族年金が非課税なのは、理解できる。
しかし、女性が老後に単身になるのは、「万が一」なのだろうか。むしろ、夫が妻に先立たれる方が、ずっと想定外の事態な気がする。
妻に先立たれた男性や、生涯、独身の男女に比べて、遺族年金を受ける高齢女性の負担が格段に軽いのはフェアでない。この層が「公平さを欠いても、非課税を」と求めているとも、ちょっと思えないのだが。(ゆうゆうLife編集長 佐藤好美)
(2007/02/23)