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はしかを“輸出”する日本

 はしかがはやっている。専門家は「はしかがはやるなんて、途上国並みだ」と嘆く。はしか廃絶を目指すWHO(世界保健機関)では、日本は中国と並んで「2大問題国」と名指しされてしまうのだ。

 流行の中心は、子供時代に予防接種を控えた高校生だという。30年以上前は、はしかはかかるものだったから、親世代に怖さが薄いのだろうか。しかし、そのころは、天然痘の予防接種「種痘」があった時代だ。天然痘の根絶で種痘がなくなり、入れ替わるように、はしかの予防接種が一斉に行われるようになった。病には栄枯盛衰と、制圧の歴史がある。

 30年ほど前に、マイナス80度で保存された日本の天然痘ワクチン「LC16m8」は時を超えて、米国で使用準備が進められている。炭疽(たんそ)菌テロの影響などで米軍が種痘を再開したが、副作用とみられる死者が出て日本産の安全なワクチンが注目されたのだ。

 死者の多い病ほど、ワクチン開発は難しい。「LC16m8」は開発者、橋爪壮氏にちなみ、「橋爪株」と呼ばれる。日本で種痘の副作用が社会問題化し、接種手控えが起きるなか、やっと開発された安全で効果の高いワクチンだった。が、認可された翌年の1976年に、種痘の予防接種そのものがなくなり、ほとんど使われなかった。天然痘が根絶されたのだ。

 ワクチン製造には手間と時間がかかる。「日本人は副作用に敏感なので、事故があると接種手控えが起きる。だから改良され、評判のいいワクチンができる」と関係者は指摘する。

 世界に冠たる橋爪株を米国に提供する日本はしかし、米国への最大の“はしか輸出国”でもある。良いワクチンを作る能力があり、満遍なく打つ経済力もあり、教育程度も高い。それなのに、接種手控え後のフォローの悪さが、はしかの流行を招いている。(ゆうゆうLife編集長 佐藤好美)

(2007/05/04)

 

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