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現場から遠い年金制度

 50代後半の男性から以前、こんな手紙をもらった。

 家電製品の解体リサイクル会社でアルバイトを始めて1年。会社が社員にしてくれるという。老後のため、これから10年くらいは厚生年金に入れそうだ。ところが、社会保険事務所に聞いたら、20代で納めた6年とあわせても、年金は受け取れないという。しょせん、アルバイトのまま過ごすしかないのだろうか−。

 年金は原則、25年加入しないと、1円にもならない。この厳しい支給要件について、社会保険庁のある職員は「窓口で対応していると、本当に納付期間が数カ月とか、1年とか足りない人がいるんです。何とかしてあげたいが、どうにもできない…」と嘆いていた。

 こうした窓口業務に携わるのは、社保庁のノンキャリアらだ。現場を預かる社保庁は年金改正の前には、厚生労働省に改正要望を出す。常に挙がるのが、この要件緩和。わずかに加入期間が足りない人に、窓口で「年金は出せません」と説明するのに、現場がいかに苦慮しているかが伝わってくる。

 年金制度をつくる厚生労働省のキャリア官僚に、現場の実感は届いているのだろうか。

 年金記録の審査申し込みが17日、始まった。記録漏れの騒動では、社保庁が集中砲火を浴び、厚労省の存在感が薄かった。窓口やデータ管理がずさんなのは、社保庁の責任だ。労組の体質もあったのだろう。しかし、現場にミスがあっても発見できるよう、厚労省はキャリアを管理職として送り込んできたのではなかったか。それが監督できなかったのは、キャリアが「現場」を軽んじてきたせいではないのか。

 役所では、キャリアが制度を設計し、ノンキャリアが実務を担っている。しかし、キャリアが理念を追って設計しても、現場や実務から遠いのでは、年金制度は残っても、人の心は離れていくばかりだ。(ゆうゆうLife編集長 佐藤好美)

(2007/07/20)

 

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