産経新聞社

ゆうゆうLife

めい自慢はいいけれど

 携帯写真を手に、30代の女性記者がとろけそうな顔で言った。「ほら、見てください。かわいいでしょう。つかまり立ちができるようになったんです」。

 子供ではなく、めいの自慢。お兄さんに子供が生まれたのだという。以来、彼女は取材先で見つけたと言っては絵本を、かわいらしいと言ってはベビー服を買い込んでくる。

 少子化で最近のベビーは裕福だ。父母に加えて、両家の祖父母がパトロンになる「6ポケット」が普通。「君んところは、ポケットが多そうだね」とからかったら、「でも、めいっ子の肩には、介護も5人分、かかるんです。だから、今のうちに恩を売っておこうと思って」と、不穏な発言。

 なんでも、彼女のきょうだいで結婚したのは兄1人。義姉もきょうだい唯一の既婚者で、両家あわせて、30代の独身者が3人いるという。加えて、パパ、ママで5人分。

 当初は「遺産はまるまる1人にいくのね〜」と盛りあがったが、すぐにママが「老後もこの子、1人で負うのかしら」と気づいたという。一同、震撼(しんかん)としたらしい。

 最近、めい自慢、おい自慢は珍しくない。さもありなん。平成17年の国勢調査によると、30代前半の未婚率は、男性で47・1%。女性で32%。ここ20年ばかり、5年ごとにおおむね5ポイントずつも伸びる勢い。しかも、この層は団塊ジュニア世代。ボリュームゾーンなのだ。

 社会保障が暗い話ばかりなのは、高齢者増による年金や医療給付の伸びより、支え手の激減が大きい。それなのに、最近のニュースは70代前半の医療費の窓口負担引き上げ凍結、70代後半で新たに生じる保険料免除など…。

 選挙権のない支え手のことはだれが考えるのかと、暗澹(あんたん)とするのであった。

(ゆうゆうLife編集長 佐藤好美)

(2007/10/12)