産経新聞社

ゆうゆうLife

今年のインフルエンザは?

 友人が子供を小児科に連れて行ったら、インフルエンザの予防接種を勧めるポスターに、こんな書き込みがあったという。

 「当院のワクチンには、チメロサール(保存剤)は入っていません」

 「チメロサールって何? 保存剤なんて食べ物にだって入っているのに、何でわざわざ、書かれているのかな」。彼女は頭をひねりつつ、「まあ、入ってないなら関係ないか」と思ったという。

 確かに、「チメロサール」が分からないと、これでは何だか分からない。しかし、医師のためらいも分かる。気にする親には情報提供したいが、「そうでない人の不安をかきたてても…」と、思ったのだろう。

 チメロサールはワクチンに含まれる防腐剤で、エチル水銀を含む。WHOは各国に、当面はチメロサールの減量を、将来的には除去を勧告しているが、実際にはメチル水銀と違い、健康被害は報告されていない。

 たぶん大丈夫だろうが、リスクかもしれないことを書くのは難しい。医師のためらいに共感したのは、記事を書いていて、似たような苦労が多いからだ。予防的に注意喚起すると、過剰反応を引き起こしかねない。やんわり書けば、意味がよく分からない…。

 しかも、無関心から過剰反応への動きが極端な気がするのだ。

 冒頭の友人は今年、保健所で「今年は子供にタミフルが使えないから、インフルエンザの予防接種が必須ですよ」と“警告”されたという。昨年、服用後の飛び降り事故などが相次いだせいだろうが、因果関係がはっきりしないのに、「使えない」ことはないだろう。しかも、昨年までは「インフルエンザ=タミフル」だったのに。

 薬も予防接種も害はある。プラス、マイナスをてんびんにかけて慎重に判断するということだと思うのだが、それがなかなか難しい。(ゆうゆうLife編集長 佐藤好美)

(2007/11/16)