産経新聞社

ゆうゆうLife

7年の入院は必要か

 大阪府の病院が、全盲の入院患者を、公園に置き去りにする事件があった。

 驚いたのは、男性がこの病院に7年も入院していたという点だ。いまどき、がんの手術をしても、「退院の目安は14日」といわれる時代である。それなのに、普通の総合病院に、慢性疾患の糖尿病で7年も入院できたのが驚きだった。思わず、7年×365日を計算してしまった。

 自己負担が3割だから、実感しづらいが、病院に1泊すると、何もしなくても、シティホテルに泊まるのと同じくらい費用がかかる。大きなベッドや広いバスタブはないが、医師や看護師が24時間待機し、高額な医療機器がいつでも使えるよう準備されているからだ。

 乱暴な言い方だが、一般の病院なら、“素泊まり”でも、日に2万円から8000円くらい。患者の平均入院日数などが延びるほど安くなる。国は入院日数を減らして、新しい薬や医療技術にあてる費用を工面したいからだ。

 男性の場合、仮に素泊まりは安かったとしても、何の治療もしないわけにはいかないだろうから、日に1万円くらいかかったんだろうか。しかも、生活保護を受けていたというから、治療費は窓口負担も含めて原則、公費である。それは、やっぱり社会保障費の無駄遣いだろう。

 男性はトラブルも多かったようだから特異なケースだが、家がないとか、1人で暮らせないなどで居場所がない人は少なくない。だから、医療の必要性の薄い人が、病院と病院を行き来していたり、介護の必要性の薄い人が特別養護老人ホームにいたりする。

 病院が障害のある入院患者を公園に置き去りにした仕打ちは非難されていい。しかし、病院や施設とケースワーカーなどが相談して、こういう人を入所させられる、しかるべき場所がなければ、問題は解決しない。(ゆうゆうLife編集長 佐藤好美)

(2007/11/23)