産経新聞社

ゆうゆうLife

10年目の保育園

 長男(14)も二男(3)も1月生まれ。受難の誕生月だ。保育園は4月入園だから、1年も育児休業を取ったら、空きはない。

 二男は結局、生後3カ月弱で保育園に入園させた。首が据わらないうちに預けるのは切なかった。会社は「育児休業は1年、取っていいんですよ」と、言ってくれたが、保育園に入れない危険を賭して、1年の育休は取れなかった。

 けれど、二男が兄と同じ夜型延長保育のある認可保育園に入れたことで、この10年を定点観測できた。

 一番、変わったのは、お母さんたちの働き方だ。

 二男が入園したとき、説明会で園側が「午後6時以降の延長保育を使う予定のある人は?」と聞いた。ほとんどの手が一斉に挙がった。

 驚いた。利用者が圧倒的に多かったからだ。長男を預けていたころは、男女雇用機会均等法の1期生が子育てを始めた時代。お迎えが遅いのは一部の人で、いつも同じ顔ぶれ。それが、10年たち、定時退社の難しい職場で働く女性もあたり前になったのかと、ちょっと感慨深かった。

 保育園に入れない「待機児童」が減らないことについて、行政は「保育園を増やしたら、預ける人も増えた。供給が需要を生み出した」と言う。預ける必要のない人が、預けるようになったとのニュアンスだ。

 だが、現場の感覚はそうではない。この10年で女性のフルタイム勤務が一般的になった。ここ数年で子育て中の残業制限などの制度も整い、働きやすい職場も増えてきた。

 「少子化で子供は減るから、保育園を建てたらムダになる」と言われる。しかし、子供が減れば、いずれ働き手も不足する。雇用環境の方が柔軟なのは、労働力不足が予測されるからだろうか。それなのに、保育園は本当に、今後も狭き門でいいのだろうか。(ゆうゆうLife編集長 佐藤好美)

(2007/12/14)