産経新聞社

ゆうゆうLife

チマチマ負担軽減策のつけ

 消費税を上げても、医療や介護が良くなる感じがしない。それより借金返済に回りそうだ。

 ここのところ、日本の医療や介護の貧困を指摘する記事が目立つ。救急患者のたらい回しによる死亡や、出産さえできない事態−。多くの人がそれに嫌気がさし、負担が多少増えても、堅固でまっとうな制度がいいと感じ始めている。それを察知しての企画なのだろう。

 しかし、負担を増やしても、社会保障が充実するとはかぎらない。内閣府は、現在の医療・介護のサービス水準を維持するには、平成37年度に約14兆〜31兆円が必要と試算した。全額消費税なら、6〜12%分だ。

 試算は「サービス水準を維持するため」だから、これだけ出しても、医療も介護も“良く”はならない。維持するだけなのに、こんなにお金がいるのは、この多くが借金体質の改善に使われるから。債務残高の名目GDP比を上げず、基礎的財政収支を改善する費用が含まれているためだ。

 日本にドーンと借金があるのは、収入よりも多く使ったせい。それなのに、社会保障を見ても、永田町では依然、借金を増やすような施策が飛び交う。昨年は補正予算を組み、70代前半の医療費の窓口2割負担への引き上げを凍結。75歳以上の新たな医療保険料負担も凍結した。さらに、その延長案まで浮上しているという。

 こちらでは「社会保障の財源が足りない」とか「後世代のために、増税が不可避」とか言いながら、もう一方で借金が増えるような施策を打つのって自己矛盾では。

 お金がたまる人はチマチマとためてドーンと使う。たまらない人は、チマチマと無駄遣いし、後で何に使ったのかさえ思いだせないのだという。選挙対策で負担軽減に走り、後で借金に苦しむ日本は後者の典型といったら、怒られるだろうか。(ゆうゆうLife編集長 佐藤好美)

(2008/01/18)