産経新聞社

ゆうゆうLife

共通言語のない薬

 ホウレンソウが千葉県産と埼玉県産と群馬県産で名前が違ったらどうだろう? 片や「ポパイ」、片や「ビジングサ」「食べ菜」などと名付けたら?

 薬の世界はそんな感じだ。「イブプロフェン」という成分の薬が「ブルファニック」だったり、「ナギフェン」だったり、はたまた「ブブロン」だったり。

 しかし、“ジェネリック(後発医薬品)先進国”では事情が違う。5年前の英国滞在中、夜中に子供が発熱した。緊急電話相談にかけたら、いくつか症状についてチェックされ、「緊急性はないわ。薬局でイブプロフェンを買って、安静にして」といわれた。でも、イブプロフェンって成分名では? 不安になって「それって商品名ですか」と聞いたら、「成分名だけど、その名前で買えるわ」と言われた。

 翌日、薬局で伝えると、「イブプロフェン」と書かれた箱が4、5種類も並べられた。薬剤師さんは「メーカーが違うだけで、おんなじよ」。ジェネリックが流通するというのは、複数の選択肢を示されることなのだ。

 しかし、日本のように商品名が多いと間違えるし、患者が初診で医師に「○○を服用しています」と申告しても、通じないこともありそう。

 実は厚生労働省は3年前、ジェネリックの商品名を「成分名+メーカー名」にするよう通知した。イブプロフェンは「イブプロフェン」という名前で売れというわけだ。

 それなのに、今も商品名が多いのは、通知以前の薬があるから。名称変更も進んでいるが、医者から「やっと名前を覚えたのに、変えるなんて」という反対もあるよう。でも、成分名を知らないと、学術論文も読めないのでは。

 薬の名前が“共通言語”で統一されれば、患者も薬について調べられるし、病気や治療法にも自覚的になれる。ジェネリックの名前は早く成分名に統一できないだろうか。(ゆうゆうLife編集長 佐藤好美)

(2008/02/08)