産経新聞社

ゆうゆうLife

羊水は腐らないけれど…

 歌手、倖田來未さんの涙の謝罪をテレビで見た。原因はラジオ番組で「35歳を過ぎると、お母さんの羊水が腐ってくる。マネジャーには早く赤ちゃんをつくってほしい」という趣旨の発言をしたことだという。

 羊水は腐らないし、形容はデリカシーに欠ける。だが、高齢出産にリスクがあるのは発言の通りだ。

 不妊治療を専門とする産婦人科医に取材したとき、こんな発言を聞いたことを思いだした。「35歳を超えると、体外受精の妊娠率も下がる。流産も増えるから、妊娠しても、赤ちゃんを抱いて送り出すところまでなかなか行き着かない。治療に来る女性は『気付いたら35歳を過ぎていた』と言うが、出産するつもりなら、35歳前に考えるよう、マスコミも情報提供してほしい」

 女は35歳までに産めということかと、抵抗を感じた。高齢妊娠、出産のリスクを知っていたとしても、人生は思い通りにはならない。早くに産みたいと思っても、環境が整わないこともあれば、めぐり合わせもある。私自身、第2子を産んだのは41歳になってからだ。

 ただ、リスクを知るのは大切だと思う。女性は卵子を生まれたときから持っている。卵子は精子と違い、新しく生産されないから、年を取れば老化する。高齢妊娠では、妊娠中毒症や糖尿病などの合併症も引き起こしやすい。厚生科学研究「妊産婦死亡における年齢因子の検討」によると、30代前半の妊婦の死亡率は10万件に9・5件。30代後半ではその2・5倍。40歳以上の妊婦の死亡率は、その10倍以上だ。

 高齢でもリスクを知れば、妊娠期に食生活や体重管理に気を配ることも、何かあっても十分対応できるところで産む準備もできる。医学が「生」や「健康」への可能性を高めるものであるのと同様に、知ることは自身のリスクを下げることになると思うのだ。(ゆうゆうLife編集長 佐藤好美)

(2008/02/15)