介護予防のデイサービスを取材した記者が帰ってきて言った。「パラダイスなんです! 半身まひの人が多いけど、カジノとか陶芸とか、みんな楽しそうで。しかも、介護度は軽くなるんです」
予測していたのは、根気とか努力とか。「一生懸命トレーニングしたら、介護度が改善した」。そんなイメージだったのに、介護予防は楽しくやればいいと思ったという。
もっとも、ランチバイキングを楽しみ、友達ができて、封筒張りやタオルたたみにいそしんでいたと聞くと、それって、普段の生活でも、できるのでは、とも思う。高齢者が居心地のいい町にさえすれば。
英国・ヨークで暮らしたとき、町には高齢者が多かった。引きこもりがちにならないのは、せかされないし、見知らぬ人とも会話を楽しむせいか。バス停ではバスが来ないと不満を分かち合う。スーパーでは、レジの店員がイチゴやラズベリーを買い込んだおばあちゃんに「今日はトライフルを作るの?」。で、しばしデザート談議。おばあちゃんは並んでいた私に英国家庭菓子の作り方を伝授してくれた。後ろに列があっても気にしない。
日本の商店街や朝市も似たようなものかも。私の故郷では5日に1度、「二七(ふな)市」が立つ。車を止めた通りに農家や河岸(かし)の人が店を出す。母は農家のおばあちゃんに「この間の小松菜がおいしかったわ。もう1束買うから、安くして」。作った野菜をほめられれば、うれしい。さして知らぬ者同士が同じものをおいしいと思う一瞬を共有する。
市(いち)を高齢者の活躍と交流の場と位置づける村もあるらしい。高齢者に居心地のいい場所やテンポなら、普通の暮らしが十分、介護予防になる。そんな生活の方が、だれにとっても楽しいと思うのだ。
(ゆうゆうLife編集長 佐藤好美)
(2008/02/22)