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負担減で医療は変わる?(下)

体内のニコチン摂取量を計測器でチェックし、禁煙指導をする島尾忠男医師(左)=東京都千代田区の結核予防会



 禁煙を目指す人を後押しするニュースが2つ続きました。1つはたばこ代の値上げ。もう1つは、病院で行われる「禁煙指導」に、医療保険が使えるようになったことです。保険適用には、「ニコチン依存症」と診断されるのが条件ですが、喫煙期間が長い人なら、いわゆる「ヘビースモーカー」でなくても、十分、対象になり得るようです。最終回は医療保険を使って目指す禁煙の話です。(中川真)

                 ◇

 東京都江戸川区の会社員、吉川正明さん(39)=仮名=は10年前、禁煙に挑戦したものの、あえなく失敗した。30歳を目前に、健康と節約を考えたのだが…。

 「ニコチンガムをかんだのですが、一気にはやめられそうもないなと思って。肺からも口からもニコチンを吸収するくらいなら、たばこを吸い続けても同じですよ」

 ニコチンガムとは、ニコチンを含有したガム。禁煙補助剤(医薬品)として発売され、5年前から医師の処方箋(せん)なしでも薬局で10粒1000円程度で購入できる。ガムから一定量のニコチンを吸収することで、愛煙家がたばこをやめても、禁断症状を抑えられる。ガムの量を徐々に減らし、体をニコチン量の少ない状態に無理なく慣らすのが目的だ。

 しかし、吉川さんの場合、自己流で禁煙しようとしたのが“敗因”だったようだ。

 厚生労働省は今春、吉川さんのような人たちは個人の意志の力を超えた「ニコチン依存症」とみなし、「禁煙指導」に保険が使えるようにした。

 喫煙は肺がんや心筋梗塞(こうそく)を導く。また、子供や妊産婦など、周囲の非喫煙者にも害を及ぼす分、たちが悪い。厚労省が禁煙に本腰を入れたのは、死因の上位を占めるこうした病気を予防し、医療費を抑制したいからだ。

 保険で禁煙指導を受ける対象になるのは、(1)10項目の質問のうち、5つ以上に該当する(2)1日の喫煙本数×喫煙年数(ブリンクマン指数)が200以上(3)ただちに禁煙を希望し、本人が文書でプログラム参加に合意する−のすべてを満たす人。

 「ブリンクマン指数」は聞き慣れないが、吉川さんの喫煙歴は20年。毎日20〜30本は吸っているというから、「200」のハードルは余裕で超えられる。

 厚労省によると、保険による禁煙指導は12週間に5回。ガムのほか、体に張るパッチなどのニコチン製剤を使って問診や助言で指導する。

 改正前は患者の自己負担はトータルで3万円程度だった。しかし、医療保険の適用で窓口負担は1万〜2万円(3割負担)に下がった。

 こうした動きを、現場の医師はどうみているのか。

 結核予防会(東京都千代田区)で禁煙外来を受け持つ島尾忠男同会顧問(82)は自身も1日50〜60本吸うヘビースモーカーだったが、45歳ごろに禁煙した。「保険適用は結構なこと。禁煙者を増やせば、医療費は確実に減るだろう。患者は禁煙外来に決意して来るから、成功率が高い。私が治療している4人も今のところ順調です」と話す。自信がない人には、特に時間をかけて説明するという。

 厚労省によると、禁煙指導外来がある医療機関(経験医、専任看護師がいる)は5月現在、全国1280カ所。島尾顧問は「指導に時間がかかるから、若い医師は消極的だ。この数じゃ、『御利益』も少ないだろうね。しかも、本来は最も指導すべき未成年の喫煙者は、(喫煙年数が短いから)ブリンクマン指数が足りず、保険の対象外になってしまう」と、問題点も指摘する。

 禁煙の最大の武器は強い決意。島尾顧問は「統計はないが、自分や知人の成果をみても、一気に“断煙”する人が成功しているような気がする」と話している。

(2006/08/02)

 
 
 
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