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分かる!差額ベッド(中)ルール徹底が必要

 一定額を自己負担して利用するのが、個室などの差額ベッドです。額は病院によってまちまちですが、差額ベッド料を取っていい部屋の条件は決まっています。しかし、そんな部屋に入っても、差額ベッド料を取ってはいけないケースもあります。今回は、差額ベッドの仕組みを解説します。(柳原一哉)

 東京都新宿区の会社員、木村美子さん(43)=仮名=は3年前、39度の熱を出した二男を、大学病院にタクシーで運び込んだ。未明の発熱で、生後2カ月の二男は熱い息を吐いていた。

 当直の小児科医が診察。詳しい検査結果などが出るまで時間がかかるため、はっきりしたことは分からず、医師から「この月齢でこの高熱は、感染症の疑いが捨てきれないので、個室に入ってください」と、告げられた。

 ところが、翌朝、事務員に同意書への署名を求められ、1日1万円の差額ベッド料を求められたことから、疑問が頭をもたげた。個室は自ら希望したのではなく、治療上、必要だから入るよう言われたのに、なぜ署名がいるのかと。

 「負担する必要がないのでは…」。とっさに出た言葉。署名にためらう木村さんだったが、職員は「では、大部屋を希望するのですか」と重ねて聞き、「お子さんはまだ小さいので、(大部屋だと)、ほかの病気がうつる危険性も高まりますよ」と個室を勧めた。

 もっとも、木村さんの頭にあったのは費用のことより幼い二男の容体。むずかる二男を思うと、このまま付き添って個室にいさせてやりたいと考え、事を荒立てないことにした。

 結局、同意書にサインし、退院時には5日分の差額ベッド料5万円を負担した。

 木村さんは「病人をかかえる家族は、容体のことで頭がいっぱい。差額ベッド料を払うか、払わないかで病院と冷静に話し合う余裕はなかなかない。私もつい、面倒になってサインしてしまった」というが、「いったいどんな仕組みなのだろう」と、あのときの疑問は残ったままだ。

                   ◆◇◆

 分かりづらいとされる差額ベッドの仕組みはこうだ。

 日本の医療は保険診療が一般的で、保険がきかないサービスは一部に過ぎない。

 個室に保険がきかないのは、個室が治療そのものと関係のない「アメニティ(快適性)」に属すると考えられているから。保険は医療にしか適用されないので、アメニティに相当する「差額」を自己負担し、個室を利用することになっている。

 厚生労働省によると、差額ベッドは、(1)1病室あたり4床以下(2)患者1人あたりの病室床面積が6・4平方メートル以上(3)カーテンなど、プライバシー確保の設備がある(4)個人用の私物収納設備、個人用の照明などが備わっている−の4つの条件を満たさなければいけない。

 額は病院の裁量で決まるため、まちまちだが、都心部で割高になる傾向だ。厚労省の調査(平成16年)では1日当たり平均、個室が6900円、2人部屋が3000円かかる。

 差額ベッドの数は増えており、7年は約19万5000床だったのが、16年には約23万1300床になっている。

                   ◆◇◆

 しかし、こうした部屋に入った場合、必ず、差額ベッド料を支払わなければいけないわけではない。

 冒頭の木村さんは、昨日、お伝えした橋本さん同様に、医師から治療上の必要で個室に入ることを求められており、差額ベッド料がかからないケースだ。

 このほか、入院の際に病院側から「今は、個室しか空いていない」と言われるケースも多い。この場合は、病院側の事情ではあるが、治療上の必要ではないので、患者の同意のうえで差額ベッド料を取ることが認められている。

 患者側からすれば、差額ベッド料を払いたくなければ、大部屋が空くのを待つか、別の病院に行かざるを得ない。

 しかし、現場の医師や看護師でさえ仕組みをよく理解していないことがある。また、差額ベッドを備える病院では、院内に料金を掲示することになっているにもかかわらず、掲示していないケースも多いとされ、ルールが徹底していないのが現状のようだ。

 木村さんは「病院が『感染症かもしれないから、個室に入ってほしい』と言う一方で、『大部屋に入れば、感染症をうつされるかもしれないから危険だ』と、ほとんど脅しに近いような言い方で、差額ベッド料のかかる個室に入るよう求めるのは、何かがおかしいのではないでしょうか」と話している。

(2006/11/07)

 
 
 
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