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メタボリックシンドローム

日中の強い眠気は睡眠時無呼吸症候群の可能性も(写真はイメージです)




 □睡眠時無呼吸症候群(SAS)

 ■肥満も一因の生活習慣病

 昼間の眠気が大きな事故につながりかねない睡眠時無呼吸症候群(SAS)。4年前に山陽新幹線の運転士が居眠り運転をしたのをきっかけに、日本でも広く知られるようになりました。しかし、SASがメタボリックシンドロームと関係があることは、あまり知られていません。

 都内の公務員、小笠原徹さん(47)=仮名=は3年前に妻から「いびきのリズムが変。呼吸が止まって、しばらくたって突然、大きく息を吸い込んだりするのは、睡眠時無呼吸症候群じゃないの?」と受診を勧められた。

 多忙を言い訳に放置していたが、山陽新幹線の居眠り運転のニュースを知って、睡眠障害の専門外来を受診した。病院で1泊し、眠っている間の睡眠と呼吸状態を調べる検査を受けると、やはり重いSASと分かった。

 睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に繰り返し呼吸が止まるため熟睡できず、昼間に強い眠気に襲われる睡眠障害の一種。高血圧や不整脈などの合併症を起こすこともある。

 放置すると日中の眠気や集中力低下が事故につながるリスクがある。例えば、スリーマイル島やチェルノブイリの原発事故、スペースシャトル「チャレンジャー」の爆発も、SASが原因とされている。

 SASのほとんどは気道が狭くなって起こる閉塞(へいそく)型。もともと気道が狭い肥満の人や、あごが小さい人などに多く、あお向けに寝ると舌や軟口蓋(なんこうがい)が下がって、よけいに気道が狭くなる。

 小笠原さんはあごが小さく、気道が閉塞しやすい体形。睡眠時に装着して下あごを前に引き出すマウスピースや、鼻から空気を送り込む装置CPAP(シーパップ)による治療を始めたが、慢性鼻炎で鼻が詰まっているため、半年前に治療を中断。目を覚ます薬を処方してもらい、仕事を続けている。

                  ◆◇◆

 一方、都内の元会社員、山口智宏さん(60)=仮名=は50歳代半ばで、肥満が原因の重いSASと診断された。

 当時の山口さんは、おなかがポッコリ出たメタボリックシンドロームの体形。健康診断では、脂肪肝や高血圧、高脂血症を指摘されていた。その上、会議中や接待ゴルフの帰りに運転中、しばしば強い眠気に襲われるようになり、医師から「睡眠時無呼吸症候群を治すにはダイエットが必要」といわれた。

 禁煙と食事制限に取り組んだ山口さんは1年で10キロ以上の減量に成功し、睡眠時無呼吸症候群とともに高血圧や高脂血症なども解消できた。「健康を取り戻したおかげで、次の仕事の準備に忙しい毎日です」と山口さん。

 山口さんが減量で治ったように、SASは横向きで寝る▽減量▽禁煙▽就寝前の飲酒をやめる−など生活習慣を変えることで改善することがある。

 今年2〜3月に全国各地で開かれた「睡眠時無呼吸症候群全国セミナー」(帝人ファーマなど主催)では、参加者から「SASでも禁煙、禁酒ができない人はどうしたらいいのか」「妻から横向きになったらいびきが消えているといわれた。SASかどうか知りたい」などの質問が相次いだ。

 東京会場で講演した東京労災病院の戸島洋一・呼吸器内科部長は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病やメタボリックシンドロームとSASとの関係を解説し、「SASは生活習慣病です」と強調した。

                  ◆◇◆

 久留米大学医学部の内村直尚助教授は、平成16年から3年にわたり、睡眠と生活習慣病との相関を明らかにする「働く世代の睡眠実態調査」を行った。

 調査結果によると、調査対象者(35〜59歳の勤労者約6000人)の51・6%は高血圧症、高脂血症、糖尿病の生活習慣病のいずれかを治療中か、健康診断で指摘されていた。このうち31%は不眠で悩んだ経験があった。一方、生活習慣病のない人で、不眠で悩んだ経験のある人は24・9%。生活習慣病を持つ人の方が、不眠の悩みを抱える人が多かった。

 しかし、生活習慣病のいずれかで治療中の人で、かかりつけ医に「眠れていますか?」と尋ねられた経験のある人は33・5%しかいなかった。

 内村助教授は「不眠は自覚できるから、生活習慣病に介入する方法としては、治療が最も簡単だ。しかし、不眠の治療は最も行われていない。不眠経験者の多くが医師に相談することも、医師から問われることも少ない」と、睡眠に対する意識の低さを指摘する。

 SASと深い関係があるメタボリックシンドローム。お腹回りの肥満が気になる人は、睡眠状態も見直した方がよさそうだ。

(2007/03/30)

 

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