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人間ドック最前線 選ぶ人・選ばれる技術(下)

最先端の人間ドックに取り組む東京ミッドタウンクリニックの田口院長


 ■ハイテク健診 普及なお時間

 最先端の人間ドックでは、さまざまなハイテク機器が駆使されています。その分、費用も高く、丁寧な対応を求める高所得層を中心に、“医療サロン”が広がっています。自治体のがん検診などの受診率低迷が指摘されるなか、二極分化が進みそうです。(北村理)

 仕事に追われ、たまの休みはほっと一息つきたいサラリーマン、年中家事に忙しい主婦…。ふだん、健康管理を怠りがちな人が、職場や家庭で採血するだけでフルコースの人間ドックに近い結果を得られる。

 「将来、そんな時代が来るかもしれませんね」というのは、東京ミッドタウンクリニック(東京都港区)の田口淳一院長だ。

 同院の看板は、105万円から220万円の日帰り、宿泊ドック。一般のドック(5万円から)もあるが、これらと差別化しているのが、50万円の血液検査「バイオフィジカル」だ。日本初という。「必要があれば、看護師が自宅や仕事場に赴いて採血し、米国のバイオ専門機関に送ります」

 結果は6週間後に返って来る。一般の健診で血液検査は30項目ほどだが、300項目近くが分析され、判定結果は交通信号と同じ3色に色分けされる。「がんはもとより、循環器系統の疾患やリューマチ、感染症など、全身の疾患が分析されます」

 米国では、X線の被爆(ひばく)を敬遠したり、ドックの時間を確保できないセレブを中心に普及しているという。

                  ◆◇◆

 こうした高級健診は、一部の富裕層に特化しているように見られがち。だが、最新鋭装置や運営努力が健診の普及に貢献した面もある。

 CT(コンピューター画像診断)やPET(陽電子放射断層撮影)を日本でいち早く導入し、最新機器の普及に一役買ったのは、会員制ホテルなどを経営する総合リゾート業「リゾートトラスト」。その医療部門「ハイメディック」は13年前、山中湖のリゾートホテルに、まだ珍しかったPETやCT、MRI(核磁気共鳴画像法)をフル装備し、ドックを始めた。

 その後、大阪や東京にも健診機関を設置。今回、東京ミッドタウンの運営にも参画した。

 各健診機関とも、医療機器の整備に約十数億円が投入されている。こうした投資ができるのは、ハイメディックの会員約5000人が、ひとり平均約600万円の会費を負担しているからだ。会員は中小企業の経営者らが多く、人間ドックだけでなく、がんが見つかった場合は専門医の紹介なども受けられる。

 こうした会員制“医療サロン”はほかにもある。慶応大学のOBを中心にした「BRBメディカルサロン」は年会費が35万円程度。入会金、保証金などが約300万円かかる。

 事業部長、友田小百合さん(看護師)は「提携先での人間ドックのほかに、担当看護師がつき、突然の呼び出しに応じて病院に付き添ったり、24時間体制でお世話します。独自にカルテを作り、健康管理の動機付けをしたり、健診機関に要望をフィードバックするなどしています」。

 結果的に、健診機関のサービス向上に寄与し、セミナーで会員経営者に従業員の健康管理を促すなど、「社会的な波及効果も小さくない」と自負する。

                  ◆◇◆

 戦後、日本で人間ドックを広めたといわれる聖路加国際病院。宿泊ドックを担当する西尾剛毅医師は「利用者の要求は年々厳しくなっている」という。

 「ドックを始めたのは半世紀前。今のような医療機器もなかったので、各分野の医師がl週間じっくり受診者と向き合い、ともに健康について考え、自分の体について理解を深めてもらうといった具合だった」

 この精神は今も変わらないというが、「世の中が忙しくなり、時間短縮とハイテク健診が強く求められる」。同院では、看板の1週間ドックを縮小し、2〜3日コースを中心にすることも検討しているという。

 同院は結果をデジタル化し、ドックを受けた日に受診者と面談し、保健指導も行う。平松園枝予防医療センター長は「結果で一喜一憂させることなく、受診者が主体的に健康維持できるような支援をしたい」と強調する。

 来年から、40歳以上の国民5000万人の生活習慣病を予防するため、健診や保健指導への取り組みが促進される。

 しかし、生活習慣病の一つであるがん対策をどう位置づけるかは、はっきりしない。内視鏡、CT、マンモグラフィーなどが標準装備された健診機関は少ない。アフターケアも含めて丁寧な対応が必要なだけに、一機関が対応できる受診者数も限られる。

 数十年先、血液検査だけで済む高度な健診が手ごろな価格で普及するかもしれないが、それまでは、持てる者と持たざる者の二極分化が進みそうだ。

(2007/08/28)

 

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