産経新聞社

ゆうゆうLife

【ゆうゆうLife】社会保障これから 難しい医療機関の評価

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 日本の医療で、もう一つ、進めるべきなのが、医療機関を選択するための「評価」である。命を預ける患者としては、医療機関の技術評価、看護部門の体制などを知りたいところだ。

 医療監視は行政が実施しているが、主に、施設の衛生面についてが中心。最近の医療法改正で、病院は予約診療や院内処方の有無、差額ベッド代が生じるベッド数、専門医の数、平均在院日数などの情報を院内やインターネットで公開することになった。だが、公開される情報は物理的なものが多い。

 「日本医療評価機構」は10年前から、病院の診療内容についても評価している。医療技術についても、1〜5点まで、きめ細かく評価されている。そのうち、同意が得られた病院については、評価結果がインターネットにも公開されているから、病院を選ぶときの参考になる。

 ただ、私の個人的体験に基づく印象では、やや評価が甘い、と思われる。また、いわゆる“神の手”のような医師の情報はないから、そうした情報を求める患者には不向きだ。

 がんの手術後の生存率などは、知りたいところだ。しかし、そういう点を評価すると、生存率のデータを上げるために重篤な患者の受け入れを渋る病院が出るとの指摘もある。比較は慎重に行う必要がある。医療機関の評価で長年の経験を持つアメリカでも、病院の比較は難しい課題とされている。

 病院間で質の向上を競ってもらうには、良いスタッフのそろった評価の高い病院に、高い報酬で報いるべきだ。だが、評価の高い病院に患者が殺到し、混乱をきたす可能性もある。そうでなくても、殺人的に混雑している病院があることも考えると、評価の実現は、なかなか悩ましい。歩みは遅いが、評価を公表している病院に、徐々にレベルを上げていってもらうしかないのかもしれない。

 具体的には、医療評価機構が受診後の患者に満足度調査などを行う。その情報を病院の組織運営や研修に反映してもらい、医療技術や看護の向上につなげる努力を求める。実現しなければ、評価を下げるなどの方法も検討する必要があろう。

 また、国の指定する救命救急センターは、救急医療の最後のとりでだから、患者の搬送が不適切に拒まれていないか、常にチェックするなどの厳しい評価も求められる。(立教大学講師 磯部文雄)

(2007/11/22)