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ゆうゆうLife

【ゆうゆうLife】社会保障これから 医療廃棄物の回収案

写真はイメージです


 不法投棄された廃棄物の山に、少なからぬ注射針や血の付着した医療用具が発見される様子が、環境問題として、しばしば伝えられてきた。

 医療機関が排出する廃棄物は産業廃棄物にあたり、医療機関は相当の費用を払って、その処理を行っている。

 医療機関に限らず、産業廃棄物の排出者は10年前から、「マニフェスト」という管理票を産業廃棄物に張り付けて出さなければならなくなった。GPSによる位置確認方法なども導入されており、以前より、不法投棄は大幅に減ったと思われる。

 ただ、廃棄物の問題では、その後、家電リサイクル法や自動車リサイクル法が施行された。これは、廃棄される家電や自動車を、製造業者が回収し、成分材料を再利用し、残渣(ざんさ)を適正廃棄するシステムである。費用は利用者が負担している。

 「これと同様の考え方のシステムを、医療廃棄物に取り入れてはどうか」という提言が、実は10年以上前、厚生省の研究会でなされた。

 医療用具の製造者が、医療機関から使用後の医療用具を回収し、一括処理してはどうかというわけだ。

 具体的には、医療機関は今と同様、施設内で分別収集し、それを回収者に渡す。回収者が製造者に渡し、製造者が適正処理する。医療廃棄物には感染性のものもあり、入念な処理が必要なものも多いから、他のリサイクル法と同様のニーズがあると考えられる。

 医療機関で使用される製品には多くの種類があるから、回収方法には工夫が必要かもしれない。ただ、こうしたことが実現されれば、メリットは医療機関に限らない。

 在宅医療が増え、家庭からも多くの医療廃棄物が排出されるようになっている。それにも、対応できるからだ。

 自己透析など、家庭で使用されるかさばる医療用具は、使用前は配送されるが、使用後の回収はされていない。しかし、市町村によっては回収しないところもある。血の付着したものなどは、なおさらだ。

 10年以上前にもこうした問題があり、市町村、医療機関、個人の役割分担が決められたはずだが、今後、さらに問題が深刻になるとすれば、この際、昔の提言である製造者による回収を検討してみてはどうだろうか。(立教大学講師 磯部文雄)

(2007/12/20)