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オムツ代、なぜ違う? 「療養病床」の介護型と医療型

介護型では無料なのに、医療型になると実費になるオムツ。値段も病院によってマチマチだ



 ■医療型は“自費払い”

 医療ニーズが高く、自宅で暮らせない高齢者が長期に入院する病院「療養病床」には、介護型と医療型の2タイプある。受けるサービスは実質的に変わらないがオムツ代が実費でかかるため、医療型の方が“割高感”がある。最近では、病院の事情で介護型から医療型に変わり、いきなり高額な入院費を請求されるケースが出ているので注意が必要だ。(清水麻子)

 「来月から入院費が上がります」

 今年5月、大阪市の自営業、加藤明さん(61)=仮名=は、寝たきりで要介護5の母(95)が入所するA病院(医療型療養病床)から、月5万円以上もの入院費の値上げを知らされ、驚いた。

 加藤さんによると、入院費アップの内訳はオムツ代という。A病院は介護型から医療型に転換し、これまで無料だったオムツ代を利用者に請求するようになった。オムツ代の価格は病院が自由に決めるが、A病院は1日約2千円と設定。加藤さんは「年間35万円しかない母の年金では払えない」と困り顔だ。

 厚生労働省によると、同じ療養病床でも介護型に入院した場合は介護保険が適用され、オムツ代は介護サービスの一部とみなされるため、無料となる。一方、医療型では介護保険ではなく医療保険が適用されるため、オムツ代は自己負担になる。

 医療と介護の仕組みの違いに詳しい医療ソーシャルワーカーの団体「東京都医療社会事業協会」の村山正道理事は、「全国で療養病床の再編が進んでおり、今後、加藤さんのように高額なオムツ代が請求され、頭を抱えてしまうという問題が表面化してくるだろう」と予測する。

 厚労省によると、療養病床の再編は、医療度の低い高齢者が長く入院し、医療費を圧迫する“社会的入院”を解消するため行う。現在、全国に約10万床ある介護型は平成23年度末までに全廃となり、医療型や老人保健施設などに変わる予定だ。

 村山理事は「入院先が、老健施設などの介護施設に変わった場合はオムツ代は無料のままだが、医療型に転換した場合は自己負担に変わる。病院には医療ソーシャルワーカーがいるので相談してほしい」と話す。

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 ■利用者に分かりづらい詳細

 ◆金額の決定は病院/食事代や居住費も

 自費払いになるものはほかにも食事代や居住費などがあるが、医療型・介護型ともにそれほど差はない。そのため、「オムツ代の差から医療型のほうが割高感がある」(村山理事)。

 一方で、生活保護の人の“おこづかい”である日用品費の額は医療型(基準額)の方が3370円高いという。

 また、医療費の面では、自己負担が多い場合に一定額を超えた部分が払い戻される高額療養費制度があり、医療型の方が多く返還される場合もあるという。

 村山理事は「制度が介護保険、医療保険と2種類にまたがっていることで、肝心の利用者に入院費の詳細が分かりづらくなっている。こうした根拠も病院側はもっと利用者に説明していくべきはないか」と指摘している。

(2009/07/23)