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ケアマネの独立性(上)望まぬサービスの提供

 ■事業所の都合を優先?

 ケアマネジャーに望まぬサービスを勧められたり、必要以上のサービス量のケアプランを作られた経験はないでしょうか−。ケアマネの役割は、介護の必要な人やその介護者が快適に暮らせるよう、環境を整えること。しかし、複数のサービスをもつ事業所に所属すると、勤め先の都合でサービスを利用者に勧める面もあるようです。ケアマネが介護保険の柱として、公正中立なサービスを提供するには、どんな環境整備が必要なのでしょうか。(永栄朋子)

 東京都世田谷区の会社員、中村節子さん(52)は6年前、ケアマネジャーに義母のケアプラン作成を頼んだ。

 フルタイムで働く中村さんにとって、切実なのは留守中のオムツ交換。こまめなオムツ換えを希望したが、義母のケアマネは「ヘルパーは1回2時間でないと」と、やんわりと拒否。所属先から週5日、2時間ずつヘルパーが入るよう手配した。

 結果として、日中のオムツ交換の回数が不足する半面、ヘルパーは2時間滞在しても、最後は手持ち無沙汰(ぶさた)だった。

 しかし、当時は介護保険も始まったばかり。中村さんは「介護保険がどういう仕組みかも分からず、ヘルパーさんに来てもらえるだけでありがたかった」と、振り返る。

 そんな中村さんの考えは義父(91)の介護で一変した。別の事業所にケアプラン作成を頼んだところ、ケアマネの仕事ぶりが義母のときとはまるで違った。状況に応じて、複数のサービス事業所を使い分けるのだ。

 たとえば、朝、昼、夕、晩の1日4回入るヘルパーは2カ所の事業所に振り分ける。昼は長めに滞在してもらい、朝、夕、晩はオムツ交換のためだけに、短時間の巡回型ヘルパーを提供してくれる事業所にサービスを手配した。

 さらに、義父が脳梗塞(こうそく)を起こして要介護度が上がると、それまで利用していた「おおらかな」(中村さん)ヘルパー事業所から、体温や水分管理が細やかな事業所に変更してくれたという。

 中村さんは「こんなに違うものかと驚きました。義父のケアマネは、困った点をプロの目で解決してくれる。今、振り返ると、義母にはかわいそうなことをしました」と、話す。

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 実は、中村さんが義父のケアプランを頼んだのは、「独立型」事業所。サービスはケアマネジメントだけで、ケアマネはプランに応じて、外部の事業所にサービスを発注する。

 これに対して、義母のケアマネはケアマネジメント以外の介護サービスも持つ「併設型」事業所に属した。事業所の主なサービスはヘルパー派遣だったため、事業所は自社の都合を優先させて、ヘルパーを派遣したのだろう。

 ケアマネは本来、利用者の都合に合わせてプランを作るのが仕事だ。しかし、中村さんのように、事業所の都合が優先されるケースは併設型の事業所でしばしば見られる。なかでも、所属先のサービスばかりを提供するケースは「囲い込み」と呼ばれる。

 三菱総合研究所によると、所属先に偏ったサービス提供はデータからも見て取れる。たとえば、通所リハビリを持つ事業所のケアマネが通所リハビリを利用する割合は5割超だが、持たない事業所のケアマネの利用率は1割に過ぎない。他のすべてのサービスでも、傾向は同じだ。

 厚生労働省も囲い込みを問題視する。今年4月から、正当な理由なく、ヘルパーやデイサービスが1つの事業所に90%を超えて集中する事業所については、ケアマネジメント1件あたり、月額2000円を減らす方針を打ち出した。

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 しかし、東京都のある併設型事業所の責任者は「介護報酬の設定はぎりぎり。介護や福祉の分野では、合理的に経営しようとすると、『営利主義だ』と非難されるが、自分たちのサービスを使ってもらう経営努力をせずに、どうやって職員の給料が払えるのか。サービス定員に空きがあれば、埋めようと思うのは当たり前」と反論する。

 日本ホームヘルパー協会会長で、福岡県の介護支援専門員(ケアマネジャー)連絡協議会の因利恵副会長は「ケアマネが自分の所属先のサービスを利用するのは、組織で働く人間の心理として、ある意味、当然。自社サービスを使わないのでは、サービスに自信がないことになる」と、一定の理解を示したうえで、「公正中立を求められるケアマネの仕事の特性を考えると、ケアマネジメント事業所は他のサービス事業所から独立させるべきではないか」と提案している。

(2006/08/21)

 
 
 
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