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訪問ヘルパーが来ない!(下)

 ■予防効果上げる市町村 身の上含めて細かい対応

 法改正で軽度者の利用窓口が「地域包括支援センター」に変更になりました。そのためか、現場の不慣れと説明不足も目立ち、利用者との間に齟齬(そご)が広がっています。しかし、地域サポートに取り組んで来た自治体では、予防実績が上がってきている所もあるようです。(寺田理恵)

 「80歳代の親は要介護1から要支援2になり、ホームヘルパー派遣が認められないといわれた。親と同居だが、働いている。これまでは週1回のホームヘルパー派遣で、できることは自分でやってもらうようにしてきた」

 「子世帯と同居しているため、『同居人がいるとホームヘルプ・サービスを受けられない』といわれた」

 首都圏のNPOなど7団体が今年6月19−21日に開設した電話相談「改正介護保険ホットライン」でも、家族との同居を理由に訪問ヘルパーによるサービス(ホームヘルプ・サービス)を打ち切られたケースが目立った。

 事務局を担当する「市民福祉情報オフィス・ハスカップ」主宰者の小竹雅子さんによると、実施前のスタッフ打ち合わせでも、サービス打ち切りの理由とされた「同居家族」が、95歳の夫だったり、40歳代の引きこもりの息子だったりした事例が話題になったという。

 集計の結果、最も相談が多かったのは「ホームヘルプ・サービス」について。また、相談の過半数が要介護1以下の軽度者についてで、相談内容も「サービスの制限」についてが多く、軽度者に対する給付抑制が浮かび上がった格好だ。

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 報告書では、訪問介護の課題を、「生活援助の回数減や時間短縮について、高齢者には一方的な通知しか行われていない事例が目立つ。保険者である市町村にていねいな説明を求めるとともに、『もう使えません』『国の指導です』といった対応をするケアマネジャーにも対応の改善を求めたい」と分析している。

 同居家族を理由とするサービス削減で、現場の根拠となっている厚生労働省課長通知は平成12年3月に出されたもので、しかも「一律の基準で判断を行うものではなく、個々の事情に応じ、現場の良識ある判断による」とされている。ところが、法改正後、現場では「一律の基準」として使われがちだ。

 小竹さんは「一昨年秋に厚生労働省のかけ声で始まった『介護給付適正化推進運動』以来の流れですが、今年4月の介護保険制度改正に便乗してサービスを減らした市区町村が多い」と指摘。「ケアマネジャーが利用者の味方になるべきで、地域包括支援センターが保険者である市区町村とやりあってくれなければ、高齢者は泣き寝入りになってしまう。しかし、ほとんどの自治体は準備不足で、人材がそろっていません」と話す。

 「地域包括支援センター」について、多くの市町村が「年度途中での職員採用や予算措置が困難」「職員が新制度に習熟していない」などとしており、態勢が整っていないのが実情のようだ。

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 一方、早くから地域支援に取り組む自治体では、予防に一定の成果を上げている所もある。

 埼玉県和光市では5年前から、介護保険対象外の人も含めた高齢者に、総合的な予防サービスを提供し、要介護認定者に占める軽度者の割合が全国平均よりも低くなった。同市は介護保険のサービスに上乗せして、配食、送迎などを市独自の給付とし、サービスの充実を図っている。

 地域包括支援センターのリーダーも務める同市長寿あんしん課の東内京一さんは「例えば、高度成長期に建てられたエレベーターのない団地の4、5階に住む高齢者には、1階に空室が出たときに転居を勧めています。介護予防で効果を上げるには、介護保険外の事業が欠かせません。高齢者の身の上も含めたマネジメントを行うよう努めています」と話す。

 軽度者に対する予防の訪問ヘルプは、どのようなサービスを提供するかがはっきりしない。「同居家族」のように、利用できないとされるケースでも、和光市では、一度はサービス利用を認めて利用者との関係を作り、そのうえで説明責任を果たす方法も考えるという。

 「できるのに、何もしない家族には理解を求めます。ときにはケアマネが怒鳴られて帰ってきます。現場で接するケアマネらには高齢者と家族への接遇能力や、見えないニーズを測る洞察力に加えて、説明・説得をする能力も必要なので、育成には時間がかかります」

 同市は、サービス担当者が集まる会議でケースごとに検討し、チームケアで解決することで人材を育ててきた。介護は人を相手にする仕事。介護保険を効率的に使うためにも、地域ケアを担う人材の育成が急がれそうだ。

(2006/10/12)

 
 
 
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