特ダネ情報 住まい 転職 為替
powered by goo

文字の大きさ:

 
 
 

 

icon

得ダネ情報

 
 
ゆうゆうLife
 

365日24時間の在宅サービス(1) 

 □高齢者世帯の長い夜

 ■不安大きいトイレ介助

 「もしも、夜中にベッドから落ちて、起きられなくなったら」。高齢者だけの生活では、特に夜の不安がつきまといます。在宅での暮らしを24時間バックアップしようと、国は今年4月の介護保険法改正で、夜の緊急ニーズに対応する「夜間対応型訪問介護」と「小規模多機能型居宅介護」を新設しました。しかし、24時間ケアの実現には時間がかかりそうです。(寺田理恵)

                    ◇

 どれほど仲の良い夫婦でも、一方が要介護になって施設に入れば、離れて暮らすことになる。

 神戸市の岡本芙美子さん(74)=仮名=は、夫と2人で在宅で暮らすことを選んだ。穏やかで紳士的な物腰の夫は、芙美子さんより5歳年上。要介護4で、家の中でも車いすを使う。子供はおらず、心細いときもあるけれど、人もうらやむほど仲むつまじく暮らしている。

 芙美子さん自身、要介護1で足もとがおぼつかないが、外出時の手助けをしてくれる友人は多い。昔なじみの理髪師が「古くからのお得意さま」である夫の調髪に訪ねてくれるなど、長年培った大切な人間関係も、在宅でいれば維持できる。

 問題は夫のトイレ介助ができないことだ。

 「私ではおむつ交換もできないし、とくに夜の尿は大変なのよ。ヘルパーさんに午後8時まで居てもらえると助かるけれど、家庭のある人が多くて、土曜に来るヘルパーさんは子供がいるので6時に帰らなければなりません」と芙美子さん。

 岡本家に訪問ヘルパーが来るのは土、日曜の夕方3時間。その間に夕食をすませ、夫には夜間、おむつで我慢してもらう。

 夜間には、ヘルパーが利用者宅を順番に回って短時間のケアを行う巡回型の訪問サービスがある。しかし、芙美子さんは「自宅の鍵を預けておくとヘルパーさんが来て、排尿の有無に関係なく、おむつを交換していく。知らないヘルパーさんが来るので、寝ている間に家に入ってこられるのには抵抗があります」と言い、利用する気はない。

 夜中のトイレ介助などのため、ヘルパーの来ない月−金曜のうち、3泊は家政婦に泊まり込んでもらう。しかし、全額自己負担で約5万円と費用がかさむので、残りの2泊は泣く泣く夫をショートステイ(短期入所)に送り出している。

 芙美子さんが指摘するように、夜間は来てくれるヘルパーの確保が難しいのが現実だ。

                    ◇

 しかし、一方で「夜間のサービスは利用者が少なく、ニーズが低い」との見方もある。午後6時〜午前8時の訪問介護は、日中に比べると、25〜50%割り増しになる。これを定期的にケアプランに組み込むのは、利用者にとって負担が大きい。

 さらに、おむつの吸水性やじょくそう予防具の性能が良くなったことも、利用が少ない理由の一つだ。かつては夜間に2、3回のおむつ交換や体位変換が必要だった。しかし、今は起床時と就寝前におむつを交換すれば、しのげる程度には改善された。

 介護労働安定センターの「ホームヘルパーの就業実態と就業意識調査」(平成17年)によると、ホームヘルパーの勤務時間帯は日中(午前8時−午後6時)が97・1%で、その他の時間は早朝、夜間、深夜を合わせても22・4%にすぎない(複数回答)。

                    ◇

 決まった時間にヘルパーが来る従来のサービスニーズは低くても、在宅を支えるにはやはり、365日24時間、必要なときに呼べば来てくれるサービスが不可欠との意見もある。

 「突然、体調が悪くなったときに対応してほしい」「転倒したときに起きられないことが怖い」など、高齢者世帯では、「万が一」の夜の不安が大きく、芙美子さんのように、「おむつでなく、できれば尿意を感じたときに介助してほしい」との声も根強いからだ。

 これを受けて、今年4月の介護保険法改正では、利用者からの通報でヘルパーが駆けつける「夜間対応型訪問介護」が新設された。看護師や介護福祉士などの有資格者が通報を受け、訪問が必要かどうかを判断する。夜中のトイレ介助にも対応する。巡回型と組み合わせることで、効率的なサービスを提供するのがねらいだ。

 しかし、サービスを介護保険で提供する事業所は全国で約30カ所。利用できる地域は都市部にとどまっている。次回は、夜間の訪問介護を行う事業所の現状をリポートする。

(2006/11/14)

 
 
 
Copyright © 2006 SANKEI DIGITAL INC. All rights reserved.