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軽度者のサービス(下)家事サービスは必要か

 ■次世代の負担減らす工夫を

 ヘルパーの仕事は、オムツ交換や食事介助などをする「身体介護」と、掃除や洗濯などの「家事サービス」に分かれます。家事サービスは利用者は多いものの、ヘルパーがお手伝いさん代わりになったり、利用者の満足感が低かったり、何かとトラブルの多い分野。給付費が膨らむ中、現場や専門家らは「家事サービスは介護保険でカバーすべきなのか?」と指摘しています。(永栄朋子)

 東京都に住む藤川祐子さん=仮名=(49)は、ケアマネジャー歴6年。ここ数年、「家事サービスは本当に必要なのか?」と考えている。

 家事サービスで求められる要求はさまざま。「畳を毎日ふいてほしい」と望む人もいれば、「お肉はあの店、お魚はこの店で」となじみの店での買い物を求める人も。その要求に応えるのが介護保険なんだろうかと、疑問がぬぐえないのだ。

 家事の仕方も人によるから、利用後の満足度も低い。東京都の国保連合会には「ヘルパーの掃除の仕方に不満がある」「デパートへの買い物を依頼したら断られた」などの不満が寄せられる。

 それでも、自立につながるならいいが、藤川さんにはその実感がない。

 「風呂掃除は、自分が湯船を出る前に洗えばいいし、掃除機は重くても、質のいい化学ぞうきんがある。力を入れなくても瓶のふたが簡単に開く便利グッズもある。知恵を絞った方が、よほど自立を促すと思うんです」

 介護保険では、このサービスが1時間約2000円。全額利用者負担なら、安易な利用にブレーキもかかるが、介護保険の自己負担は1割。約200円だ。

 介護保険導入前は、自分で掃除をしていた人も、200円でヘルパーが頼めるなら、「掃除機をかけてほしい」となる。娘や嫁がしてくれるなら、「月に1度でいい」という高齢者も、ヘルパーには「毎週来て」と望む。

 「『高齢者がかわいそうだから』と、サービスをつけるケアマネは多いですが、おかしいと思っているケアマネもいる。私たちの介護保険料も、それで上がってしまうのですから」。藤川さんは、家事サービスが必要なのは「認知症と90歳以上の人だけ」だと考えている。

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 厚生労働省によると、今年6月のヘルパーサービス利用額のうち、家事サービスだけの利用額は約26%を占める。ほとんどが要介護度の軽い人の利用だ。

 「介護保険に家事サービスは不要」という声は以前からある。厚生労働省は「代行型の家事サービスが、自立支援を理念とする介護保険の給付に向くのかというのは、国会でも議論された。どこまでを給付の範囲とするかは今後も大きな論点です」と話す。

 一方で、家事サービスは必要だという意見も根強い。奈良県天理市の保健師、島田夏代さんは「介護放棄や虐待は珍しくない。介護保険なら、ヘルパーがそうした家庭にも入っていける」とする。虐待や介護放棄を事前に防止できるというわけだ。

 神奈川県の認定審査会の委員を務めるエッセイストの野原すみれさんも「高齢独居や高齢夫婦だけの世帯も多い。特に男性は『男子厨房(ちゅうぼう)に入らず』で育った世代。現実には、軽度でも家事サービスが必要な人はいる」とする。

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 だが、財政的な問題は無視できない。平成13年度に約4・4兆円だった介護給付費は、昨年度は約6・3兆円。介護保険料の全国平均も4000円を超えた。

 各自治体は、同居の家族がいる場合の家事サービスを削るなど、給付を厳格にしている。しかし、これにより要介護度は同じなのに、サービスが受けられる人や受けられない人が出て、かえって利用者の不公平感も増している。

 日本ホームヘルパー協会東京支部の三上章代理事は「中重度の方は心配だろうが、ヘルパーは排泄(はいせつ)介助や食事介助などの身体介護の際に、利用者の周辺環境も整備することになっている。だから、家事代行サービスがなくても、対応できるのではないか。このまま、お手伝いさん代わりに家事代行サービスを入れて、孫子の代まで負担を背負わせたいのでしょうか」と話す。

 龍谷大学の池田省三教授は「介護保険は社会保険。要介護度が同じなら、対象者には平等にサービスを給付しなければならない。ところが、同じ要介護度でも、家事はできるケースや、できないケースがある。家事サービスは介護保険から外して、本当に必要な人には福祉で提供すべきだ」と話している。

(2006/12/06)

 
 
 
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