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要介護認定は適正か?!(上)全国一律のはずが…

 ■人によって判定バラつき

 要介護度を決める認定は、介護保険の要。要介護度によって、利用できるサービス量が違ってくるからです。この要介護度、日本全国どこで認定審査を受けても、同じ判定になるはずですが、結局は人間が調査し、判定するもの。現実には、バラつきも大きいようです。(永栄朋子)

 東京都の橋本セツ子さん(78)=仮名=は、要介護認定を受ける際、いつも寝たきりのふりをする。できるだけ高い要介護度を手に入れ、ヘルパーサービスを多く利用したいためだ。

 橋本さんには持病があるが、ひとりで旅行にも行くし、車の運転もする。だが、家事は若いころから家政婦さん任せだったので習慣がない。夫が亡くなって経済的な余裕がなくなった現在、介護保険のヘルパーサービスに頼っているのだ。

 「ここだけの話だけど、ヘルパーさんから『寝たきりのふりをすれば要介護度は上がるわよ』と聞いて、認定調査のときは演技して、要介護2を維持しているの」と、打ち明ける。

 橋本さんのように、旅行もできて、受け答えもはっきりしていて要介護2というのは、さすがに極端なケースだろうが、要介護度を上げるために、高齢者やその家族があの手この手を使うのは珍しくないようだ。

                  ■□■

 関西地方のある市で認定調査員を務めるケアマネジャー、青山幸子さん(56)=仮名=は昨年、80代の女性宅へ認定調査に行った。家族が「夜中に不安がつのるようで眠らない」「自力で起き上がりや歩行ができない」と主張したため、調査書にもそのようにチェックし、判定は結局、要介護2。しかし、実は生活にほとんど支障がないことが、後で分かったという。

 青山さんは市に再調査を申し出たが、家族が市の介護課の職員と懇意だったせいか、結局、うやむやに。「自分の目で確かめるよう心がけているが、家族の話で判断せざるを得ない調査項目も多い。不正が防げず、残念」と、肩を落とす。

 一方で、家族が認定調査員に現状をうまく伝えられず、実際より低い要介護度が出てしまう利用者もいるという。

 青山さんが担当したある高齢女性は幻覚や幻聴におびえ、下着にはいつも便が付着していた。しかし、要支援2だった。再審査で要介護2に上がったが、最初の調査書を閲覧したところ、生活機能はほぼ自立、認知症も最軽度にチェックされていた。

 「家族が調査員にうまく状況を説明できなかったんでしょう。まれなケースですが、要支援2が再調査で要介護4になった人もいます」と話す。

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 要介護認定は全国一律が建前。だが、実際には同じ市町村でさえ、判定結果には差が生じる。利用者や家族が、認定調査員に介護の必要度をどう伝えるかにもよるが、調査員の性格や能力差も大きい。

 東京都稲城市の保健師、高並仁子さんは、認定調査員も審査会の委員も「温情派、シビア派、やる気がない派の3つに分けられ、タイプによって判断が違ってくる」と指摘する。

 たとえば「温情派」の調査員は、家族が「よく転ぶ」と訴えると、最後に転んだ時期などを尋ねることもなく、身体機能に問題があると記入する。反対に「シビア派」は、サービスが本当に必要な状態でも、「独居なんだから、これくらいできるはず」などと、厳しくチェックしがちだという。

 同様の傾向は、コンピューター判定後に行われる認定審査会の委員の間でも生じる。

 同市は昨年、認定審査会によって、判定に差が出るか否かを調査した。要介護1相当と判定されたおよそ350人を「要介護1」か、新設の「要支援2」かに分類する過程で、2つの審査会の結果を比べたところ、153人を担当したグループでは62%が要支援2と判定し、残りを担当したもう一方のグループでは38・5%しか要支援2と判定しなかった。

 同市の介護保険課長の石田光弘さんは「サンプル数が少ないが、グループによって判定に差が生じるといえるだろう」と解説する。

 同市は、人によるバラツキが出ないよう、調査書については記入が済んだ後で保健師がチェックし、認定審査会についてはメンバーの入れ替えを行う。

 石田課長は「誰が調査や審査を担当するかで、判定結果には差が生じる。しかし、みんなが同じ事例で研修したり、認定審査のグループ間でメンバーを入れ替えることで改善は可能だ」と指摘する。

 介護認定のコンピューター判定のソフト作成に携わった国立保健医療科学院の筒井孝子福祉マネジメント室長は「判定結果が本当に正しいのか、外部監査で抽出調査するような仕組みをつくることが大事だろう」と話している。

(2007/01/29)

 
 
 
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