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要介護認定は適正か?(中)担当ケアマネの調査

 ■情が弊害に…公正さ必要

 公平な判定が求められる要介護度の認定。しかし、コンピューター判定にかける認定調査を、誰が行うかで、要介護認定に差が生じているようです。利用者を普段からよく知る担当ケアマネジャーが調査した場合、要介護度が甘く出る傾向が指摘されているのです。しかし、自治体によっては、調査を担当ケアマネに委託するところや、逆に排除するところも。判定に差が出る可能性を、どう考えればいいのでしょうか。(永栄朋子)

 ケアマネジャーの高畑雄介さん(48)=仮名=が住む関西地方のある都市では、要介護認定を更新する際、認定調査には担当ケアマネジャーが出向く。

 高畑さんの担当する高齢者は約30人。「判定が下がろうものなら、利用者に『前と状態は変わらないのに』と怒られるから、下がらないよう、気を使いますよ」と、ぼやく。高齢者や家族にとって、要介護度は利用できるサービス量に直結するから、要介護度が高く出ることが歓迎されるのだ。

 高畑さんによると、判定を下げないコツは、調査書をなるべく「大げさに」(高畑さん)書くことだという。

 たとえば、「家族が『おばあちゃん、お風呂に入りや』と勧めても、本人が『後で』と言ったら、『介護に抵抗を示す』の項目にチェックする」といった具合だ。

 「最近は『状態が不安定』『認知症の傾向がある』というのもキーワード。あとは、主治医にもなるべく大げさな意見書を書いてもらえば、本当は軽い人でも、要介護2までなら、簡単に出せますよ」

 だが、まれに前回より低い判定が出てしまうことも…。それでも、変更申請は出さない。再調査は市職員が行うため、要介護度がかえって低くなる危険性があるためだ。

 「利用者はもちろん、ケアマネにとっても、要介護度が上がって困ることはないけれど、下がったら報酬が減るリスクが生じる。だから、担当ケアマネが調査すれば、甘くなるのは当たり前。私が役所なら、絶対に担当ケアマネに調査はさせませんね」

 高畑さんほど極端ではないが、担当ケアマネが調査すれば、結果が甘くなる傾向はありそうだ。

 利用者の認定調査に携わる複数のケアマネが「不正はしないが、利用者や家族の様子をよく知っているだけに、知らない人が調査するよりも有利になると思う」と口をそろえる。

                   ◇

 民間のケアマネジャーに認定調査を任せることについては、厚生労働省も「過剰な給付につながる傾向があるため、保険者である自治体が認定調査を行うことが望ましい」とする。

 鹿児島県の薩摩川内(さつませんだい)市は、65歳以上の市民の5人に1人が介護認定者で、全国平均を大きく上回る。平成15年にそれまでは担当ケアマネが行っていた認定調査を、市町村職員が行う方式に切り替えた。

 その結果、高齢者の総数は増えたにもかかわらず、14年に5703人だった要介護認定者は、17年には5499人に減少。毎年、対前年比10%台で伸びていた介護給付費も1%台の伸びに急落した。

 同市国保介護課の春田修一課長は、給付費抑制の理由について、「ケアプランのチェックや事業者への研修など、複数の要因があるが、認定調査を市が行うようにしたことも大きい」と認める。

                   ◇

 担当ケアマネに認定調査を委託する自治体の多くが、市職員が行うよりもコスト減になることや、マンパワー不足を理由に挙げる。だが、「普段、接しているケアマネの方が利用者の状態がよく分かる」と、積極的に担当ケアマネに調査を委託する自治体もある。

 神奈川県藤沢市もそのひとつ。同市は担当ケアマネが認定調査をするだけでなく、二次判定を行う認定審査会でも、ケアマネの調査書と主治医の意見書に違いがあれば、主にケアマネの意見書を尊重するという。

 藤沢市内の利用者の満足度は高いが、一方でケアマネの意見が過度に尊重されるとすれば、他の地域との不公平感は免れない。他の自治体からは「全国一律の審査基準を揺るがす“ローカルルール”だ」との声も出る。

 龍谷大学の池田省三教授は「担当ケアマネが調査を行えば、利用者の心情をくみ取ったり、自分たちのサービスを利用してもらいたいがために甘い調査をする可能性は否定できない」としたうえで、「介護保険は社会保険なので、認定の基準は全国一律が大前提。地域差があっていいはずがない。人件費コストを理由に、ケアマネに調査を委託する市町村もあるが、非常勤職員を使えば、コストも抑えられるはずだ」と話している。

(2007/01/30)

 
 
 
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