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介護保険のなぞ(中)  

 【読者の質問】

 ■ヘルパーは別居親族の介護に入れる?

 2月12日付読者投稿「要介護認定やっぱり不公平」の中で、大阪府の方が「実の娘がヘルパー資格を持っている場合、別居なら、仕事として親の介護に入れる」とありますが、法令違反ではないでしょうか? 私の県では別居親族がヘルパーとして入るには、自治体との事前協議が必要です。(永栄朋子)

 ■自治体ごと解釈に差

 香川県高松市のヘルパー、後藤典子さん(61)=仮名=は2月、新聞で「実の娘がヘルパー資格を持っている場合、別居なら、仕事として親の介護に入れる」と書いてあるのを目にして驚いた。

 勤務先では、たとえ別居でも、親はもちろん叔父や叔母でも、親族に対して仕事で介護に入るのは一切、認められていないからだ。

 後藤さん自身、週に4日、要介護2の実母の世話をするため、自転車で30分の道のりを通う。母が他のヘルパーから世話を受けるのを嫌がるので、介護保険のヘルパーは利用していない。年金が少なく、1割の自己負担が重いのも理由だ。

 同僚のヘルパーも2年前、実親と義理の親、双方の介護が本格化した際、事業所に「親への介護に仕事として入りたい」と申し出た。

 しかし、責任者の説明は「自分の親は介護保険で(別のヘルパーに)見てもらい、あなたは他のお年寄りを見てあげて」というものだった。同僚は介護との両立ができずに、ヘルパーをやめていった。

 後藤さんは「娘が親の介護をするのは当たり前ですから…」というものの、「仕事として、親の介護に入れたら助かります。ヘルパーとして、家族の介護に入れないのは、全国一律の基準ではないのですか?」と、首をかしげる。

                   ◇

 ヘルパーの親族へのサービスは、どこまで仕事として認められるのだろうか?

 厚生労働省によると、国が禁じるのはあくまでも「同居の家族」について。「別居の家族」については、「特に規定はない」という。

 各自治体に問い合わせたところ、国の基準に従って、「同居の家族へのサービスは禁止」と差はない。しかし、別居の家族については解釈に差がある。

 通知ではっきり禁止を打ち出しているのは、沖縄県と兵庫県。6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族へのサービスは、別居でも「原則禁止」だ。

 例外が認められるのは「他のあらゆる方法を検討したが、家族による訪問介護の提供以外に方法がない場合」(沖縄県)など。兵庫県も同様だが、さらに別居の親族がヘルパーとして入る際には「市町と事前協議すること」を条件にする。

 両県とも、制限を設けた理由に「家族介護との区別が付きにくい」「家庭内は外部の目が届きづらく、サービスの質の低下につながる」ことを挙げる。

 沖縄県長寿社会対策室は制限の背景に、「実際は仕事をしていないのに、親族にサービスしたとして、介護報酬を不正請求するケースが相次いだため」と打ち明ける。

 一方、他の多くの自治体は「国の規定がないので、通知などで特に制限はしていない」とする。だが、同じ「制限なし」でも、自治体間に温度差はあるようだ。

 2月12日付の投稿は大阪府の読者からのものだったが、大阪府や北海道などは「国の基準がない以上、別居なら認めている」とおおらか。高知県も別居ならOKだ。

 それに対して、「禁止はしていないが、お勧めもしていない」とするのは東京都や宮城県など。おおらか派よりこちらの方が多数派だ。

 冒頭の後藤さんの住む香川県もこのグループ。県長寿社会対策課は「法的根拠がないので、まあ認めてはいるんですが…」と言いながらも、「何段階か、抵抗はしています」とする。

 同課の“対抗策”とは、事業所の問い合わせに対して、「可能なら親族以外のヘルパーがサービスしてくださいと勧める」→「その結果、親族ヘルパーしかいないとなれば、『念のために保険者(市など)に聞いてくれ』という」→「保険者でも止められないなら、仕方がない」というもの。

 しかし、「事業所から問い合わせがあった場合に、そう答えている」(同課)というから、わざわざ聞かなければ、それで済んでしまう側面もある。最終的には、親族がヘルパーとして入っていても、「適正なサービスとして入っていたら、止める手立てはない」(同)からだ。

 自治体によって、こうした差異があることについて、当の担当者らは「給付過剰になるから、国が原則、禁止すべきだ」と口をそろえる。

 四国のある県の担当者は「親の面倒をみるのは当たり前。なぜ子供なのに、それがヘルパーだと介護保険のサービス対象となるのか? ヘルパー以外の職業の人が介護する場合に比べて不公平感があるし、給付の無駄遣いにつながる」と主張。

 東北地方の担当者も「介護保険は大半が公費なので、より高いモラルが求められる。ヘルパーは密室で行われるサービスだから、透明性を高めるためにも、国は別居の場合も親族のサービスは制限すべきではないか」と話す。

 前述の後藤さん自身は「同僚はみんな、親の介護が始まれば仕事を辞めている。住んでいる場所が違えば、仕事として認められるのは不公平ではないでしょうか」と話している。

(2007/03/14)

 

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