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在宅介護、本当に必要なもの(2)

たまにでも、長時間のヘルパーサービスは難しいのだろうか(写真はイメージです)


 ■長時間サービス ケアマネの腕次第

 在宅介護の要、ヘルパーサービス。老々介護の家庭が増えており、介護者が通院したり、外出するために、「たまにでいいから、ヘルパーさんに3〜4時間来てほしい」という声を、しばしば聞きます。制度上は可能ですが、現実にヘルパーを長時間、確保するのは難しいようです。(永栄朋子)

 東京都葛飾区の中井幸恵さん(69)=仮名=は、アルツハイマーで要介護4の夫(81)を介護している。

 「去年までは私に悪態をついていた」という夫も、今は幸恵さんが誰だか分からない。「戦友と会う約束がある」と言っては、車いすを押すように頼むので、2人であてどもなく電車に乗ることもたびたびだ。

 「毎日午前2時半に起こされるので、私までおかしくなって、よく泣きました。でも、これでも楽になったんです。夫が歩けたときは、徘徊(はいかい)もひどかったんです」

 介護保険では、幸恵さんが週に1度、通院で留守にする間、ヘルパーを2時間頼み、あとはベッドと車いすを借りているだけだ。「通院の合間にスーパーへも行きますし、それ以外は目を離しさえしなければ、私一人で済みますから」(幸恵さん)

 そんな幸恵さんの切実な願いは「月に1度でいいから、ヘルパーを4時間、利用させてほしい」ということ。隣県に住む妹に会って、介護の気晴らしをしたいのだ。

 だが、担当のケアマネジャーは、幸恵さんが夫と同居しているのを理由に、「1回に2時間以上は無理です」という。

 2時間では、電車で往復するだけで終わってしまう。そう訴える幸恵さんに、ケアマネが示した選択肢は3つ。(1)介護保険2時間+2時間分の実費8000円を組み合わせて計4時間にする(2)介護保険で2時間頼み、いったんヘルパーが帰って2時間あけて、再び介護保険で2時間頼む(3)夫をデイサービスやショートステイに預ける−というものだ。

 幸恵さんはどれも使えないと嘆く。外出のために8000円も払えないし、かといって、夫を2時間も1人にはできない。デイサービスも「ガキ大将だった夫はいばるし、年寄りが大嫌い」。一度無理に行かせたら「『そんなにおれが邪魔なら出て行く』と大騒ぎしました」。

 「私は夫と年が離れているからまだ頑張れる。でも老々介護の人はどうしているんでしょうか」(幸恵さん)

                  ◆◇◆

 「介護保険ではヘルパーを長時間、利用できない」という話は、よく聞く。しかし、法律では、ヘルパー利用の上限は規定されてはいない。厚生労働省は「ケアプランの中で、ヘルパーを長時間、連続して使うことが妥当だという説明がきちんとなされていれば、利用できます」と説明する。

 そこは、ケアマネの腕が問われる。神奈川県藤沢市の独立型ケアマネジャー、米(よね)吉子さんは「長時間のサービスが本当に必要だと判断したら、本人の状態から必要なサービスを全部、探し出して、組み合わせます。例えば、お掃除で1時間半、自立支援を兼ねた買い物で1時間、着替えや入浴で1時間…と」。本来、それがケアマネの仕事。米さんは実際に、利用者に4時間のサービスをつけている。

 ただ、問題なのは、同居の家族がいる場合、サービスを制限する自治体があることだ。幸恵さんの住む葛飾区では、掃除のヘルパー利用などは認めない。

 米さんは「幸恵さんのケアマネが『2時間』といったのは、それ以上は理由付けができないのでしょう」と指摘しつつ、「どうしても時間が確保できないなら、私なら、自費負担で8000円を勧めるのではなく、NPOなど、自費でも1000円程度の安い事業所を探します」と話す。

 ケアマネの力量の差といったところか。

                  ◆◇◆

 半面、事業所が“確信犯”でサービスをつけないケースもある。介護報酬は、短時間サービスの方が手厚く、ヘルパーを長時間派遣しても、事業所は介護報酬をその分、獲得できないからだ。

 生活援助は「1時間以上」が約2910円。これ以上どれだけ滞在しても、報酬は変わらない。厚労省は「必要なら長時間滞在しても構わない」というが、事業所にはその分、人件費が生じる。必然的に「生活援助は1時間半まで」が暗黙のルールになっている。

 身体援助は「1時間」のサービスが約5840円なのに、延長分は30分ごとに830円にしかならない。

 しかし、サービスとサービスの間が約2時間空けば、新たに報酬をカウントできる。幸恵さんのヘルパーが4時間のサービスを2回に分ける方法を提案したのは、2回に分ければ、事業所に“うまみ”が生じるからだ。

 自身もケアマネジャーである立教大学の服部万里子教授は「長時間のサービスが使えるかどうかは、ケアマネジャー次第。必要性を盛り込んでくれるケアマネジャーを探してほしい」とアドバイスしている。

(2007/05/22)

 

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