産経新聞社

ゆうゆうLife

【ゆうゆうLife】社会保障これから 介護苦からの脱却

 介護保険は、自宅での“介護地獄”を防ごうというのが出発点だが、所得の低い人はサービス利用に消極的になることも考えられる。

 しかし、生活保護世帯では、介護保険料は生活費とは別に生活保護で給付され、介護を受けた場合の一部負担も、生活保護から給付されている。市町村はこうした情報を周知する必要がある。

 生活保護の対象にまではならない低所得者にも、介護保険料の減免措置があり、月々の一部負担の上限額が一般の人より低く設定されている。また、多くの市町村では、社会福祉法人が提供するサービス利用料が半分になる減免制度があることも周知されるべきだろう。

 所得の多寡に限らず、要介護の認定を受け、事業者に介護サービスを申し込んだのに断られたというような場合、事業者は、他の事業者を紹介しなければならないことが法令で決まっている。「ケアマネや事業者が見つからない」という要介護者やその家族は、市町村に事業者への指導を求めて相談したらいい。

 介護保険サービスを利用できても、適切なサービスが提供されず、介護苦に陥ることもある。例えば、介護計画で夜間介護を必要とするケースなどが考えられる。こうした場合、ケアマネの対応がカギになる。自身が所属する事業所に夜間対応型訪問介護サービスがなければ、利用者のために、他の事業者のサービスを紹介しなければならない。

 この地域密着型サービスを実施している市町村はまだ少ないが、ニーズがあれば、サービスも生まれる。声を上げることで、市町村は動き、介護保険は良くなっていく。

 利用者から要求があった場合はもちろん、市町村は自らも、高齢単身者や老々介護の世帯などに、適切なサービスが提供されているかを確認するのが望ましい。そして、夜間対応型の訪問介護が必要なのに給付されないなどの問題がある場合は、審査支払いの過程も含めて、ケアマネや事業者に必要な指導をすべきだろう。

 介護にかかわる自殺や他殺がなくならないこともあり、厚生労働省も、高齢者の孤立死防止を目指したプロジェクトを始めた。単身者のケースだけでなく、家族介護で孤立して死に至ったケースなども分析し、どういう対応が必要だったかを検討することが求められる。結果によっては、さらなる介護者への負担軽減策も求められよう。

 (立教大学講師 磯部文雄)

(2008/01/09)