産経新聞社

ゆうゆうLife

自分で作るケアプラン(上)


 ■慣れれば簡単 必要なサービスだけ選択

 介護保険の在宅サービスの利用に必要なケアプラン(居宅サービス計画)は、ケアマネジャーにしか作れないと誤解していませんか? ケアプランは実は、利用者本人や家族でも作れます。この自己作成、経験者には「自分に合ったプランを立てられる」「介護予防になる」「不必要なサービス利用が減った」などと好評です。慣れてしまえば、それほど難しくないようですから、挑戦してみてはいかがでしょう。(永栄朋子)

 兵庫県明石市の堀部喜久子さん(77)は、2年前から要介護3の夫のケアプランを立てている。

 夫は10年ほど前、心筋梗塞(こうそく)で倒れた。今は数歩歩くのがやっとだ。数年間はケアマネに頼っていたが、リハビリのために定期的に近所のデイケアセンターに通っているので、プランの内容はいつも同じ。だが、特に不自由も感じていなかった。

 あるとき、ケアプランは家族でも立てられると知って、自己作成に切り替えた。常々「ケアマネさんも忙しい中、毎月書類のハンコを取りに来て大変やなあ」と思っていたためだ。担当のケアマネが産休に入ったことも、自己作成を後押しした。

                  ◆◇◆

 介護保険を運営するのは市区町村だから、自己作成の方法も自治体によって若干異なる。図はケアプランの自己作成を支援する団体「マイケアプラン研究会」(代表世話人、小國英夫京都光華女子大教授)の所在地、京都市の例だが、基本はどこもだいたい同じだ。

 まず、市区町村の窓口で自己作成したいと相談する。手に入れるのは「サービス利用票」と「サービス利用票別表」の2つ。次は、「どんなサービス」を「どこから」「どれくらい」利用するか、計画を立てる。マイケアプラン研究会によると、口コミを大いに活用して事業所を選ぶのがコツだという。

 事業所が決まったら、電話予約。経験者は「電話対応は事業所選びのバロメーター。電話対応がいい事業所は、サービスの質もいい」と口をそろえる。

 予約が取れたら、「サービス利用票」と「サービス利用票別表」に予定を書き込んでいく。書類には「事業所番号」「サービスコード」「サービス単位」など、聞きなれない単語が並ぶが、堀部さんによると、「要は『いつ』『どんなサービスを』『どこの事業所から』『どれくらい』受ける予定で、『費用はいくらなのか』を聞かれているだけ」。分からない場合は調べる方法もあるが、「一番いいのは利用する事業所に直接聞いてしまうこと」だという。

 書類に記入したら、役所の窓口に持参する。京都市の場合、チェックを受け、コンピューターで正式の「サービス利用票」「サービス利用票別表」を作成してもらう。京都市の場合、同時に「サービス提供票」「サービス提供票別表」も手渡されるので、これは予約した事業所に送る。

 あとは実際にサービスを利用し、月末に利用票の実績欄に記入して役所に提出すればいい。月末の利用票(実績記入済み)と翌月の利用票は一度に提出できる。

                  ◆◇◆

 堀部さんが自己作成を始めてすでに2年。「慣れるほどにメリットばかりを感じる」と話す。

 最初はケアマネの立ててくれたプランをまねていた堀部さんも、今は工夫を凝らす。介護保険の報酬の仕組みを知ったことで、無駄遣いも減った。「以前は『忙しいケアマネの手をわずらわせて予約を取り直すくらいなら…』と、気ままに休んでいましたが、事業所も困るだろうな、と。今は雨や雪が降っても休ませません。夫が寝たきりにならないのは、ひとえにそのおかげだと思います」

 手すりも、借りれば月に500円で済むが、約3万円で購入した。本人負担は1割でも、その9倍ものお金が介護保険から支払われると実感したら、借りられなかった。

 自分で予約を入れるから、予約が取りづらいと指摘されるショートステイや、急な用事で突然デイを利用したい日にも機敏に対応できる。「直前でも、空きさえあれば快く受け入れてもらえます。キャンセルが出て、意外と空いていることが多いんです」

 もちろん、介護初心者や体調に変化の激しい人には、ケアマネは心強い味方だ。全国マイケアプラン・ネットワークの島村八重子代表は「手続きが難しい人には、ケアマネの手助けが必要。だが、生活の一部として介護を受けるのだから、できる人は自分で責任を持ってプランを組み立てる方がいいと思う」と話している。

(2008/01/17)