産経新聞社

ゆうゆうLife

【ゆうゆうLife】社会保障これから 介護の人手不足

(写真はイメージです)


 介護業界は人手不足だという。「介護報酬が低くて人が集まらない」とも言われる。しかし、3年に1度改定される介護報酬は、事業者の経営や収支も考慮されて定められる。だから、それでも低いなら、介護報酬が経済情勢・労働情勢の変化に対応しきれていない可能性がある。

 または、調査から日がたち、事業者数が急増したなどで、事業者のかつての収入が減り、人件費に回せないということがあるかもしれない。

 あるいは、事業者が人件費に回すべき資金を他に回している可能性もある。人手不足の真の原因が分からない不透明さを解消するには、事業者の幹部や職員給与を含めた会計書類の開示が必要だろう。

 介護保険には多くの公費が入っている。以前、この欄で公費が支払われる医療法人は会計を公表するのが適当だと指摘した。介護事業所も同様に、会計を開示すれば、「事業所経費」とされるものが明らかになる。

 人件費不足が生じるもう一つの可能性としては、単価の地域差がある。

 介護保険では地域によって単価に差があり、最高と最低の差は7・2%。在宅サービスでは、人口密度が高い都市部の方が地方より効率的だから、地域差の拡大には異論もある。しかし、入居率90%以上の介護保険三施設については、こうした差はない。生活保護費には地域差が22%、給与法では調整率が12%あることを考えると、もう少し差を設けてもいいのではないか。あるいは、景気の影響を受けて労働需給が逼迫(ひっぱく)している地域で単価を引き上げる方法もあるだろう。

 人手不足の問題では、介護サービスの担い手として外国人労働者の導入が論じられる。

 しかし、人件費が安く済むからと導入すると、禍根を残す。一つには、介護労働者が家族を呼び寄せようとした場合、拒否するのは国際的に難しいからだ。郷里から老いた両親を呼び寄せれば、無職の両親には生活保護を出さなければならない可能性もある。子弟への日本語教育費などに加え、そうしたコストも覚悟で家族ごと受け入れるという国民的合意ができれば別だが、そうでなければ、当面はそのコストの一部でも介護報酬に上乗せした方がよいだろう。(立教大学講師 磯部文雄)

(2008/02/20)