産経新聞社

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年金 ひとり身のおば 介護にかかるお金(上)


 ■「未支給年金」の受給対象

 子供のいない夫婦や、結婚しない人が増えています。将来、おじやおばを介護したり、生活を側面支援する人も珍しくなくなりそう。しかし、おいやめいが介護や生活を支援する場合、環境整備は十分ではないようです。(佐藤好美)

 神戸市に住む主婦、岡田美和子さん(56)=仮名=は昨年秋、社会保険業務センターから届いた年金についての通知を読んで驚いた。

 センターが求めてきたのは、夫の伯母の年金の返還。伯母は今春、99歳で亡くなったが、返還を求められたのは、伯母がまだ生きていた時分の年金なのだ。

 伯母が亡くなるまで住んでいたのは、長崎のグループホーム。もともと、子供のいない人で、生活費の出し入れなどは、同じ長崎に住む伯母のめい2人が気を配っていた。年金も実質的には、めいたちが管理し、グループホームの費用にあてていたようだ。

 「昨年までは、夫の母が書類管理をしていたのですが、義母も85歳で体調を崩したものですから、夫が引き継いだんです」と岡田さん。以後、書類管理は岡田さん夫婦が引き受け、伯母が4月はじめに亡くなったときは、市役所に死亡届も出した。

 ところが、死亡から約半年後、社会保険業務センターから「4月15日に支払った国民年金、厚生年金を返還するように」との知らせが届いたのだ。

 4月15日に振り込まれた年金が、2月分と3月分であることは、すでに確認済み。岡田さんは「まだ、生きている時分の年金ですから、てっきり、頂けるものと思っておりました。それなのに、こんな通知が来て…。私どもに代わって、生活の面倒をみていた伯母のめい2人に、今さら『年金を返還するように』と、言わなければならないんでしょうか」と、いまだに納得がいかないでいる。

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 ■おい、めいは受け取り範囲外

 社会保険庁によると、年金の受給者が亡くなった場合、死後に支給された分は「ご本人が受け取れないのは確実なので、いったん返還が求められます」という。

 岡田さんの場合、死亡月の4月分を含め、この年金は「未支給年金」と呼ばれる。受給者の死亡で受け取り手がなく、いったん宙に浮いた年金のことだ。だが、一定範囲の親族が条件を満たせば、代わりに受け取れる。

 未支給年金を受け取れる範囲は配偶者、子供、父母、孫、祖父母、または兄弟姉妹。おいやめいは含まれない。加えて、生計をともにしていたことが条件で、別居の場合は第三者の証明が必要になる。

 冒頭の岡田さんの場合、亡くなった伯母には、未支給年金を受け取れる親族がいない。伯母の配偶者や兄弟姉妹はすでに亡く、伯母夫婦には子供がいなかったからだ。

 しかし、実際に生活の面倒をみていたおいやめいが、未支給年金を受け取れないことについては、議論がありそうだ。

 岡田さんも「納得がいかないですねえ。親族もみんな年をとっているので、説明しても、うまく伝わらない。どうして、生きていたときの年金なのに、受け取れないんでしょうか」。

 社会保険庁はこれに対して、「年金はご本人の老後の生活を保障するもの。遺産とは違い、受給者が亡くなれば、年金は本来の役割を終える。それを払う以上、範囲は限定されます。生計をともにするのは、兄弟姉妹までだろうということで線引きされています」と説明する。

 しかし、子供のいない夫婦、結婚しない男女は増えている。祖父母や両親だけでなく、おじ、おばの愛を一身に受けた子供が将来、おじやおばの生活を支援するケースもあるとみられ、未支給年金の受け取り範囲は課題になりそうだ。

(2009/01/15)