「増える介護離職」の取材で、家族の病気や介護のために仕事を辞めざるを得なかった人々に会った。多くに共通するのは、「家族を大事に思っているんだなあ」という印象だ。
妻の介護のために、会社を辞めた男性は「妻と仕事、どちらか選べといわれれば妻。収入は減りましたが、妻孝行ができて幸せです」と言った。
ある女性は「大切に育てられたんです。母におんぶされ、子守歌を歌ってもらったころを思いだすと、介護せずにはいられない」と、ハンカチで涙をぬぐい、私まで目頭が熱くなった。
施設に預け、面会にも行かない家族もいる。一方、仕事をしながら、在宅介護で、という“いばらの道”を、あえて選ぶのは、「施設に預けるのが忍びなかった」という人が多い。家族を思うがゆえに、介護負担は重くなり、結局、仕事か介護かの二択を迫られ、会社を辞めざるを得なくなる。
こういう家族思いの介護者たちに、企業はおしなべて冷たい気がした。介護や育児の両立支援を誇る企業として知られながら、「実は介護には力を入れていない」というところは少なくなかった。
ワーク・ライフ・バランスの支援は、育児だけではない。働きながら親孝行したい、という従業員に「応援するよ、頑張ろう」と手を差し出してくれる優しい会社が増えていってほしい。(清水麻子)
(2009/02/06)