今回から、遺伝子と病気の関係について考えてみたい。
前回お話をした病気の予防あるいは病気とは何か、という見方との関連でいけば、遺伝子技術の進歩は特に、病気の診断について変化をもたらしている。「どこからが病気なのか?」という問いかけに対し、違った見方を示しているのだ。
いまや、病気の診断、治療が細胞や分子、遺伝子レベルになっているのは、皆様もご承知のとおりだが、では、どんな例があるのか。ここで紹介してみたい。
図に示したように、旧来の遺伝病▽遺伝性の乳がん▽高血圧や糖尿病▽感染症−の順で、影響の大小を問わなければ、実はほとんどの病気の発生に遺伝子が関係しているのだ。
つまり病気は、環境的要因と遺伝的要因の両方の要素から起きているといえよう。
もう一つ、遺伝子と病気の関連で覚えておかなければならないのは、関連する遺伝子の数だ。多くの遺伝子が関連する多遺伝子病は、糖尿病やがんなどがその代表格である。
こういった病気の場合には、ある遺伝子に異常が分かっても、それがすぐに病気につながるわけではない。すなわち、多くの遺伝子が関係しているので、一つの遺伝子がおかしいからといって、すぐに病気になるわけではない。
一方で、単一遺伝子病というのもある。これは、ある遺伝子の異常が即病気につながるものだ。遺伝性の乳がんがこれにあたる。
ここまで話すと、遺伝子診断と予防の関係が明らかになってくると思う。すなわち、がんになる遺伝子や、確実に認知症になる遺伝子を持っている人に対し、どのように対処するのがよいのかという問題である。(医学博士 真野俊樹)
(2006/08/10)