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遺伝子による早期診断の問題点

 前回、確実に病気になる遺伝子(単一遺伝子病)を持っている人にどう対処するのがいいのか、という問いかけをした。この答えは残念ながら見つかっていない。遺伝子が機能したり、機能不全のために発病するまでに、治療法があればいいのである。

 しかし、治療法がない場合にはどうするのか、という点が極めて大きな問題として浮上する。

 発病し余命が決まったがんなどと違って、発病するまでは普通に生活も仕事もできる。だが、本人にとっては、生きる気力がなくなること著しい。場合によっては、本人の受け止め方にもよるであろうが、社会的な差別を受けることもあろう。

 確実に病気になる単一遺伝子病でも対応が難しいのだから、多遺伝子病はもっとややこしい。10%の確率で糖尿病になる遺伝子を持っている人がいた場合に、どうか。すぐに治療をしたいとか、予防的に生活習慣を変える人もいるであろう。ただ、中にはやけになる人もいるかもしれない。病気になる確率が高くなればなるほど、やけになる可能性が高くなる。

 医学の進歩は目覚ましい。そして、この進歩のひとつに、遺伝子による早期診断技術があることは間違いない。たとえば、生活習慣病のなれの果てともいえる、心臓疾患になることを考えてみよう。昔であれば、動悸(どうき)や息切れが、病気をみつける手段だった。今では心臓の超音波検査などの最新機器で心臓機能の異常が早期に見つかる。

 しかし、人間の体には「代償機能」といって、衰えた部分を補う働きがある。最終的に心臓筋肉のすべてが疲れ果ててしまうまでは、なかなか最新機器での診断も難しい。

 だが、遺伝子や細胞を調べて診断すると、もう少し早い段階で異常を見つけることができる。以前に触れた、メタボリックシンドローム(内蔵脂肪症候群)は病気の予備軍であった。しかし、メタボリックシンドロームの予備軍もある。この病気予備軍とでもいうべき状態は今後、どんどん増えていくだろう。

 これは、医学の進歩の一つの流れである。しかし、この部分には、本人の気持ちと、金銭の問題がつきまとう。こういった予防の状態への対策が保険ですべてカバーできない以上、対処のためにお金を出すのは個人になってしまうからである。(医学博士 真野俊樹)

(2006/08/24)

 
 
 
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