前回と前々回で、第3者評価である医療機能評価やISO(International Organization for Standardization)を紹介した。
しかし、「あなたが医療機関を選ぶ際、第3者評価を受けていることを考慮しますか?」とのアンケート調査では、「考慮する」が54%、「参考にする程度」が43%。評価の決め手にはなっていなかった。
理由は、これらが診療科ごとに自分の病気に対する医師の腕の評価たりえないこと。すなわち、自分の病気について腕がいいかどうかを示す指標ではないからだということを前述した。
では、何のために、こうした評価があるのだろう? 第3者評価、特にISOは製造業にモノの品質を保証するために生まれた。時々、医療も、製造業と同じように流れ作業である−との主張を耳にするが、これはとんでもない話だ。
確かに、医療行為にも大きく言って2つの流れがある。1つは病院に入って受け付けを済ませ、受診し、会計をしたり薬剤をもらったりするという流れである。外来に多いパターンだが、入院も、外来受診の代わりに入院治療があると考えれば、この流れの1つといえよう。
もう1つは、病気が診断されてから、退院あるいは連携しているほかの医療機関などへ受診していく流れである。
このように一連の流れがあるので、おのおのをきちっと管理していけばいい医療につながるという考え方だ。
しかし、機械と人体は違う。医師にとっては情けない話だが、なぜ病気になるか、たとえばがんでも認知症でも、原因は不明なのだ。したがって、時計やパソコンを直すのと違うのは自明である。
であれば、医療というサービス業において、第3者評価は何のために行うのであろうか。ひとつは、評価を受ける医療関係者や医療機関側に緊張感がもたらされる。また、同じプロ同士がチェックするので問題点も指摘される。そうなると改善しなければならない。
であるから、こういった認証は受けていないより受けている方がいいのは間違いないが、患者さんから見れば結局、他の情報と総合的に判断するしかない、といえるだろう。(医学博士 真野俊樹)
(2006/09/14)