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ヒポクラテスの誓い

 「ヒポクラテスたち」(昭和55年)という映画があったのをご存じだろうか?

 京都府立医大を卒業した大森一樹監督が自らの体験をもとに制作した。若者たちが大学病院での臨床実習を通し、医術を身につけていく青春映画である。

 映画のタイトルにもなった「ヒポクラテス」とは、古代ギリシャの医学の大成者のことだ。そのヒポクラテスが医療に携わるにあたって誓ったという文言が今に伝わっているが、それには医(者)の倫理の原点が記されており、現代でも医学教育の現場で利用されてきている。

 医学教育で初めて採用されたのは1508年、ドイツのヴィッテンベルグ大学医学部で。1804年、フランス・モンペリエ大学の卒業式で初めて宣誓されて以降、各国に広まってきている。

 たとえば北米では約80年前、医学校の19%で卒業式の誓いとしてヒポクラテスの文言が誓われていたが、現在はほぼすべての医学校の卒業式で行われている。

 誓いは次のような内容だ。(小川鼎三訳より抜粋)

 『医神アポロン、アスクレピオス、ヒギエイア、パナケイアおよびすべての男神と女神に誓う、私の能力と判断にしたがってこの誓いと約束を守ることを。

 (略)私は能力と判断の限り患者に利益すると思う養生法をとり、悪くて有害と知る方法を決してとらない。

 (略)純粋と神聖をもってわが生涯を貫き、わが術を行う。

 (略)いかなる患家を訪れるときもそれはただ病者を利益するためであり、あらゆる勝手な戯れや堕落の行いを避ける。

 (略)この誓いを守り続ける限り、私は、いつも医術の実施を楽しみつつ生きてすべての人から尊敬されるであろう。もしこの誓いを破るならばその反対の運命をたまわりたい』

 ここに盛り込まれているのは、患者の利益優先▽危害や不正目的の治療排除▽致死薬不投与▽堕胎禁止▽情欲の禁止▽守秘義務−といった考え方だ。これは現代にも引き継がれ、医師の倫理の根源になっている。

 専門家である医師は、こういった内容に基づいた自らの職業規範と、プロフェッショナリズムの魂を持っているのである。(医学博士 真野俊樹)

(2006/10/19)

 
 
 
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