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「国民皆保険制度」の再認識を

 医療保険制度改革の第1弾である「健康保険等の一部を改正する法律」において、「現役並み所得(単身で年収383万円、夫婦で520万円)という所得基準を有する70歳以上の者の自己負担の見直し」が10月から行われた。

 今回は、現役並み所得の方の窓口負担が2割から3割に引き上げられただけだが、今後は70歳から74歳の方の自己負担が原則1割から2割に増える。

 また、高額療養費にかかる自己負担限度額も引き上げられた。

 そのほか、慢性期の療養型病院(療養病床)に入院する70歳以上の高齢者の食費・居住費として、新たに「調理コスト相当」と「光熱水費相当」を自己負担化した。

 これまで療養病床入院時の食費は「入院時食事療養費」として、食材費相当(月額2万4000円)を患者が負担し、残りは医療保険から支払われていた。

 10月以降は、70歳以上の方には「入院時生活療養費」として、食材費+調理コスト相当(月額4万2000円)の「食費」と、光熱水費相当(月額1万円)の「居住費」が課せられ、残りの生活療養費用は医療保険から支払われる仕組みに変わった。この結果、療養病床で徴収されるコストは、1日あたり780円から1700円に増加した。

 高齢者は一般に年収が少ないから、これはかなりの負担になると考えられる。

 平成16年を境に、日本の対GDP比あたりの医療費は、イギリスの後塵(こうじん)を拝するようになった。経済における医療費割合が、先進国で最も少ない国になったのである。

 確かに、高齢化が世界一のスピードで進んでいることも事実である。しかし、高齢者の所得は現役世代と異なる。給与所得に依存する部分が少なく、生命保険の満期や、資産の売却などの一時所得が多く、安定した所得がない世代である。

 自己負担の増加は、日本の医療の優れた点である、自由に受診できるというフリーアクセス、ひいては国民皆保険制度の意味を変えてしまうものと再認識することが重要だろう。

 (医学博士 真野俊樹)

(2006/11/02)

 
 
 
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