簡単に専門医制度を説明した前回に引き続き、制度のポイントをもう1つ紹介しよう。
専門医にも実は専門性が高いものと低いものがある。例えば、内科、小児科、外科は一言で「専門医」といっても領域が広い。基本になる専門医は、次に挙げる18学会である。
日本医学放射線学会▽日本眼科学会▽日本救急医学会▽日本外科学会▽日本産科婦人科学会▽日本耳鼻咽喉科学会▽日本小児科学会▽日本整形外科学会▽日本精神神経学会▽日本内科学会▽日本脳神経外科学会▽日本泌尿器科学会▽日本皮膚科学会▽日本病理学会▽日本麻酔科学会▽日本形成外科学会▽日本臨床検査医学会▽日本リハビリテーション医学会。
前回取り上げた心臓血管外科専門医は専門性が高く、こうしたカテゴリーには属していない。
ポイントは、原則として基本領域の専門医は1人の医師について1つとの考え方がとられていることだ。基本領域の専門医にならないと、さらに専門性が高い専門医になれないという2階建ての制度になっている。日本の法制度上は、どの医師がどの専門をうたってもよい。しかし専門医の世界はそうなっていない。
さらに、米国の専門医は取得がもっと難しいとされ、日本の学会でも、専門医の取得を難しくしているケースもある。実技のビデオを見て資格を与えるか否か判断するケースもある。試験の合格率が低い日本内視鏡外科学会の専門医がそれだ。
この学会では、専門医取得の条件として、各領域の専門医認定証▽各領域の学会▽研究会の会員証明証▽学会などが主催する内視鏡外科に関する教育セミナー参加証明書類▽指導的立場にある者2人の推薦状▽業績目録−が必要だ。
また、術者として最近行った内視鏡下手術の未編集ビデオを提出する。ビデオは自分で企画、指導医の補助を受けずに遂行したものという条件が付されている。
逆にいえば、このようなハードルが高い専門医は、合格率が低いので医師のレベルは高い。ほかの専門医と比べれば、分野が狭いだけに、その技術に関しては日本で有数とされるような(専門医でなくてもそういった医師は存在しえるが)専門医である証しといえよう。
(医学博士 真野俊樹)
(2006/11/16)