さて、いままで専門医というものを考えてきたが、どのようなメリットがあるのだろう。
日本の医療制度は良い制度だといわれる。そのひとつは、誰でも、どこででも、どの医者にでも受診が可能であるという「フリーアクセス制度」が挙げられよう。この場合、どの医師も同じレベルであるということが大きな前提だ。
しかし、専門化が進むと、みなが同じレベルで並ぶことにはならない。どの医師も最低限のレベルは満たすが、細かい分野となると、どの医師も専門的な知識を持って専門的な治療を行えるわけではなくなる。
それを専門医制度が補うのだ。
しかし、ここで難しいのは、医療機関の第三者認証でも議論したように、こういった仕組みが「医師であること」や「医療機関であること」に比べると、分かりにくい点である。分からなければ、必要があったとしても患者さんが選べないからである。
そこで、専門医の存在を知っていただくために広告が可能になった。平成14年4月1日から「専門医の広告」ができるようになったのである。そもそも、医療の世界での広告は厳しく制限されている。これは万が一、虚偽の広告に患者さんが引っかかってしまった場合、損害は命にかかわり、とてつもなく大きいためだ。
もっとも、どの専門医にも自由な広告ができるわけではない。
一定のルールを持つ「専門医資格」のみが広告を許されている。この専門医資格を認定する団体の基準は以下の通りだ。
学術団体として法人格がある▽会員数が1000人以上で、かつ、その8割以上が医師▽5年相当の活動実績があり、かつ、その内容を公表している▽外部からの問い合わせに対応できる態勢が整備されている▽専門医資格の取得条件を公表している▽資格の認定に際して、5年以上の研修の受講を条件としている▽資格の認定に際して、適正な試験を実施している▽資格を定期的に更新する制度を設けている▽会員および資格を認定した医師の名簿が公表されている。
こうして一定の歯止めをかけながら、専門医の存在を広く知ってもらうようになっている。
(医学博士 真野俊樹)
(2006/11/23)