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医療の不確実性と「安全神話」

 「医療の質・安全学会」が先月23日、開催された。この連載でも学会については何度か触れてきたが、医療について最新の知識を得るのが学会の位置づけだ。

 これまでは、外科手術の分野や、内視鏡の技術であるとかが、主に最先端の知識と考えられてきた。そうした中、医療そのものとでもいうべき、医療の質や安全に注目した学会が発足したのである。その意味で画期的である。

 実は、私も学会の中でお話しさせていただく機会を得た。この連載で紹介した話題で、第三者認証のことを講演した。

 第三者認証である医療機能評価やISO(国際標準化機構)を取得している医療機関はおそらく、未取得の医療機関よりも医療の質や安全については、全体としていいはずだ、という前提がある。だが、こうしたことは意外に患者さんが気にしていないようだった。

 これは、昔から「安全はタダ」という考えが日本に根強く、医療においても「安全は当然」と思う人が多いためだろう。

 また、医療機関の評価よりも、自分の病気が治ることが重要と考えがちだ。そのためには個別の医療技術、すなわち自分のかかっている病気についてのいい治療を求めるのだろう。

 しかし、薬に副作用があるように高度な医療には事故の危険性も伴う。これは医師ら医療従事者のミスによるものと、ミスによらないものがある。この「ミスによらないもの」があるところが医療の特徴である。

 例えば、医療と同じく人命を預かるパイロットであれば安全は不可欠である。しかし、これは突如、暴風に巻き込まれたといった例外を除けば、安全はかなり高い確率で求められる。

 しかし、医学の場合はそうではない。

 「昭和38年、沖中重雄東大教授が退官講演で誤診率14・2%と発表し、世間を驚かせた。人々は誤診率の高さに、医師は誤診率の低さに驚いた」という逸話があるように、安全というものを広げて考えて、医療の成果も含めた質というものまで考えると、病気にもよるが、確率はあまり高くないことになってしまう。

 これが、医療の不確実性であり、予防できない医療事故が起きる理由である。(医学博士 真野俊樹)

(2006/12/14)

 
 
 
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