これまで、飲酒の健康影響に関して、1週間当たりの頻度と1日当たりの量とを掛け合わせてアルコール摂取量を計算し、さまざまな病気の発生や死亡リスクとの関連を書いてきた。1週間当たり日本酒換算で7合まで、1日当たり1合までを適量とするデータだ。
しかし、ひとたび腰を据えて飲み始めたら1合では済まないという人は多いだろう。
そうすると、こんな疑問が生じる。同じ量を飲む場合、毎日少しずつ飲むのが良いか、それとも、かなり飲んで、後日まったく飲まない「休肝日」を設けて調整するのが良いか。これを、われわれのコホート研究で検証した。
飲酒習慣のある男性対象者を、1週間に1〜2日、あるいは3〜4日飲む「休肝日あり」のパターンと、5日から毎日飲む「休肝日なし」のパターンに分けた。すると、6割は「休肝日なし」に分類され、続けて飲むパターンの人が意外に多いことがわかった。
飲酒量による総死亡率をパターン別に比べ、平均寿命前に死亡するリスクがどれくらい違うかをみた。すると、週に7合の適量ならば、飲酒パターンによる差はみられないが、14合以上の多量になると飲酒パターンが影響してくることがわかった。休肝日がないパターンでは、休肝日があるパターンに比べ、総死亡率が高くなったのだ。
では、具体的にどれくらい違うのか。週に14〜20合飲むグループでは、週に1〜2日飲むパターンに比べ、「休肝日なし」のパターンで1・5倍高くなった。
さらに21合以上飲むグループでは1・8倍高くなった。つまり、同じように多量に飲む者の中では、休肝日のある飲酒パターンで死亡リスクが低くなったのだ。
ただし、休肝日さえ設ければ、いくら飲んでも大丈夫というわけではなかった。週に21合以上の大酒家をさらに量でグループ分けし、飲酒パターンによる違いを細かくみると、極端に多く飲むグループでは、もはや飲酒パターンの影響はみられなかった。大量飲酒は、休肝日があろうとなかろうと健康には良くない。これは、これまでに行われた各国からの研究報告でも確認されている。
健康的に飲むためには、毎日飲むなら1日1合まで、2合以上飲むなら、飲まない日を設けることが肝要であろう。(国立がんセンター がん予防・検診研究センター 津金昌一郎)
(2007/04/19)