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喫煙・飲酒と自殺

 われわれのコホート研究では、自殺という帰結についても生活習慣との関連を調べている。そもそも自殺は生活習慣病なのかという問題がある。日本では近年、自殺者数が増加し、平成10年以来年間3万人を超える。自殺者の割合は先進国で最も高い。しかも犠牲者の多くは40〜50代の男性。まだまだこれからというときで、周囲に及ぼす影響も大きい。

 日本のこのような現状を知ると、少しでも手がかりを得たいという気持ちになる。似たような環境や状況でも、自殺する人としない人がいる。その差はいったいどこから来るのだろうか。

 40〜69歳の男性約4万5000人を約8年半追跡した時点で、173人の自殺があった。コホート研究は、原則として、まず参加者全員の生活習慣要因を調べるところから始まる。時の流れに逆らわずに、十分長い期間をおいて起こった自殺という結果との関係を示せるのが強みだ。その一方で、自殺直前の生活習慣や、その人を取りまく社会経済的要因についての情報がないのが弱点である。

 まず喫煙との関連について、喫煙者の中で、1日に吸う本数でグループ分けして比べると、本数が多くなるにつれて自殺リスクが高くなり、20本未満に比べ、40本以上では1・7倍になった。

 喫煙年数にはこのような関係はみられなかった。喫煙とうつと自殺の関係はまだはっきり分からないことも多い。少なくとも、1日に吸う本数の多い人は心の健康に要注意ということだろう。

 次に飲酒との関連について。たくさん飲む人ほど自殺のリスクが高くなることは予想通りだった。「時々飲む」に比べ「1日3合以上」で2・3倍。意外だったのは「飲まない」でも、同じくらいリスクが高くなったことだ。特に、「飲んでいたがやめた」と答えた人で高くなっていた。病気やうつなどを含め、さまざまな理由が考えられるが、この点に関してはさらに深く追求していく必要があるだろう。

 このほか、特にアジやイワシなど、青身の魚に豊富なEPAやDHAといった二重結合をたくさん持った脂肪酸(n−3系多価不飽和脂肪酸)は脳内に作用し、うつ状態を改善する働きがある、との仮説がある。この点についても、コホート研究で可能なかぎり検討し、一人でも多くの方の自殺予防に役立てればと思っている。

 (国立がんセンター がん予防・検診研究センター 津金昌一郎)

(2007/04/26)

 

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