食べ過ぎ、太り過ぎ、運動不足は密接に関連している。いずれも栄養関連の生活習慣で、切り離して考えられない。ただ、肥満の人が体重を同じだけ減らすにも、運動でやせるのと、摂取エネルギーを控えてやせるのでは、健康に対する影響が違うと考えられる。
運動不足は、車社会となった先進諸国の典型的なライフスタイルから起きている。同じ日本人でも、100年前の人と現代人では、歩く量がどれほど違うことか。仕事や家事のために動く量も、どれほど違うことか。国際的な意味での肥満は、日本では欧米に比べ、まだ少ないが、運動不足は深刻な問題だろう。
主に欧米の研究結果から、運動は大腸がんのうち、欧米に多く、日本でも増えている結腸がんに予防的とされる。運動習慣があると、結腸がんに関連する物質の分泌や免疫力などに影響があるためと考えられている。
身長と体重の測定から指標が得られる肥満と違い、運動量は測定が難しい。われわれのコホート研究では、生活習慣に関するアンケート調査結果から、1日の身体活動量を、筋肉労働や激しいスポーツをしている時間、座っている時間、歩いたり立ったりしている時間、睡眠時間に分けた。
そして、睡眠時間を1とする、それぞれの運動強度(MET)に該当時間を掛けて、1日当たりのトータルの身体活動量(METs)を算出し、大腸がんのリスクとの関連を検討した。
それぞれの項目で見ると、男性では、筋肉労働や激しいスポーツをしている時間、あるいは歩いたり立ったりしている時間が3時間以上ある人から、大腸がんリスクが低くなっていた。
トータルの身体活動量でグループ分けし、部位別の大腸がんの発生率を比べてみると、最も活動量の多いグループでは、最も少ないグループに比べ40%ほど結腸がんリスクが低くなっていた。
女性では、関連が見られなかったが、アンケート調査で家事などの生活活動量がうまく把握できなかったか、女性ホルモンなど、ほかの要因の影響が強いためではないか、などが考えられる。
運動不足は、欧米だけでなく、日本でも、結腸がんのリスクを高くしていると考えられる。まだよく明らかにされていないがんの栄養関連要因の中で、運動習慣は唯一、予防効果が確実に期待できるものとされている。(国立がんセンター がん予防・検診研究センター 津金昌一郎)
(2007/05/24)