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妊婦は魚を控えるべきか 

 欧米の研究で、1日平均30〜60グラムの魚の摂取で心筋梗塞(こうそく)予防になることが示されていた。われわれのコホート研究から、魚をよく食べる日本人集団でも、多く食べている人で、さらに予防効果が高まったとの結果はすでに紹介した。DHAなどに心筋梗塞予防効果のほか、神経の発達を保護する効果が知られるが、その摂取源は主に魚である。

 では、魚は良いことづくしかといえば、そうではなく、神経発達を阻害するメチル水銀やダイオキシン、ポリ塩化ビフェニル(PBC)などの化学物質の主な摂取源でもある。

 妊婦のメチル水銀摂取による子の神経発達障害のリスク評価が食品安全委員会で行われた。国内の疫学研究の報告がなく、参考にされた海外の2つの研究のうちの1つに、7歳児の脳波測定で、1000分の1秒以下の微妙な聴覚障害のリスクが生じる可能性が報告されていた。

 厚労省は平成17年、このような影響が最小限となるメチル水銀の摂取量を、余裕をもって下回るよう、食べる量の目安を注意事項として公表した。キハダマグロやサケ、アジ、サバ、イワシ、サンマなどは特に注意不要だが、ミナミマグロや本マグロ、キンメダイなどは週に80〜160グラムとされている。

 米国では、神経の発達を阻害する可能性のある化学物質の摂取を抑えるため、妊婦に対し、魚介類は週に340グラムまでという勧告が出ている。しかし、これは行き過ぎかもしれないことを示す大規模コホート研究の結果が2月に報告された。

 研究グループは、英国ブリストル市および近郊に住む妊婦約1万2000人に対し、魚介類の摂取量などを調査。生まれた子供への発達検査の結果との関係を調べた。

 8歳での言語知能指数を調べたところ、4段階中最低のグループに入るリスクは、魚介類を週に340グラムより多く食べていた女性から生まれた子供に比べ、「1グラムから340グラム」では1・4倍、「まったく食べない」では2・2倍高くなった。3歳までの指先の動き、伝達、社交の能力をみるテストと、7歳での向社会的行動能力をみるテストで同じ傾向がみられた。

 勧告通りの魚の食べ方をした妊婦では、それ以上魚を食べていた妊婦に比べ、生まれた子供の発達に遅れが見られた。子供の発達に関しては、妊婦が魚をあまり食べないことで回避できたリスクより、魚をよく食べることで得られるメリットの方が大きかった可能性が示唆される。日本の勧告はメチル水銀に照準を合わせたものだが、魚食の制限につながる可能性も懸念される。(国立がんセンター がん予防・検診研究センター 津金昌一郎)

(2007/05/31)

 

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