ビタミンCは、欠乏すると壊血病という病気になるが、体内で合成できないので、食べ物などで取る必要がある。一方、抗酸化作用や免疫力増強作用などがあり、たくさん取ると病気の予防効果も期待されている。
ノーベル化学賞と平和賞を受賞した高名なポーリング博士がビタミンCの大量補給で、長年悩まされてきた風邪から解放されたという。このため、ビタミンCで風邪予防ができると考える人は多いが、これまでの臨床試験では、結論は得られていない。
われわれは、萎縮(いしゅく)性胃炎と診断された250人を対象に、ビタミンCのサプリメントを用いた比較試験を実施。胃がんリスクがもともと高いグループに50ミリグラム(当時の栄養所要量)か、500ミリグラム(高用量)かを、5年間服用してもらった。
研究開始前と終了後の血清でビタミンCの濃度の変化を見ると、所要量グループでは約13%、高用量グループでは約39%高くなっていた。また、サプリメントによる血中濃度上昇率は、もともとビタミンCが不足していた人ほど大きかった。
高用量グループでは、風邪の発症が少なかった。ただし、重症度や期間には影響が見られなかった。一方、高用量のビタミンCに血圧や血中脂質濃度を下げる効果が期待されたが、どちらも認められなかった。
研究の中心テーマは萎縮性胃炎への効果だが、どちらのグループも加齢に伴う胃粘膜の萎縮の進展が認められたが、高用量グループではその度合いが抑えられた。高用量のビタミンCによる胃がん予防の可能性を示す結果だ。また血中ビタミンC濃度が低い人ほど胃がんになりやすいという研究結果も多い。
ビタミンCは、胃の中で発がん物質が生成されるのを抑える作用がある。また、ヘリコバクター・ピロリ菌による慢性胃炎があると、胃液中のビタミンC濃度が低くなる。炎症による活性酸素を消去するのに、ビタミンCが多く使われているためのようだ。
ビタミンC過剰摂取分は尿で出るので、一定の血中濃度を保つには、毎日とり続けなければならない。1日約500ミリグラムまでは、補給量に応じて血中濃度は増える。
新鮮野菜などからビタミンCを多くとることは健康な身体を保つために有用だろう。そして、不足しがちな人は、サプリメントとしてビタミンCを補給することも、過剰な期待はできないが、有用である可能性は高い。
(国立がんセンター がん予防・検診研究センター 津金昌一郎)
(2007/07/19)